吉川千明(よしかわ・ちあき)
美容家
- ― 吉川さんは「香り/アロマテラピー」の第一人者として知られています。アロマとの出会いはどのようなものだったんですか。
- 吉川 結婚して子どもが生まれて…でも何か自分を活かせることをやりたいな、と思ったんです。そのときに行き着いたのが、ビューティ。私は10代、20代とコスメオタクだったんです。でも、約20年前の当時は本格的に勉強できる学校なんてなかった。そんなとき友人が、ビューティをやるならCIDESCO(シデスコ)の認定を取ったほうがいいわよ、と教えてくれて。チューリッヒに本拠を置く、エステティックの世界で最も権威のある認定です。このときCIDESCOを知らずに適当に勉強を始めていたら、今の私はないでしょうね。栄養学から人体解剖、大脳生理学、美容電気学に香粧品学、ネイルにメイクまで一切合切トータルに学びましたね。そしてこの栄養学の授業で「香り」と出会うんです。栄養学の先生はその世界ではとても有名な方だったんですが、授業中に「香りで痩せる」と言われて、とても興味が生まれて。それから、徹底的に勉強を始めましたね。輸入業者のセミナーなど、「香り」に関わるありとあらゆる勉強の機会を見つけて。それでアロマの虜になるんです。
- ― それから、サロンを開かれるわけですね。
- 吉川 自分がいいと思ったものは、人に広めたい、と思ってね。ちょうど、いろんな香りをブレンドして新しい香りを作ることを思いついたんですね。お客さまの好みをお聞きし、話し合いをしながらゆっくり香りを決めていく。それ自体がセッションのような贅沢な時間です。まだ日本では、誰もそんなことを考えていなかった。それで、その日の症状に合わせて香りをブレンドして提案するサロンを作りたいと考えたんです。最初は自宅の一部を改装した1ベッドの小さなサロンでした。幸運だったのは、エステ業界を経験していなかったことです。だから、サロンとはこういうもの、という固定概念がなくサービスやメニューが作れました。今では当たり前ですが、料金をプレフィックスした、その人のためのお任せコースというのは当時珍しくて、高い支持をいただきましたね。最初は知る人ぞ知るどころか、知る人がいないサロンでしたが、幸運なことに、『フィガロ』の取材で倉田真由美さんに絶賛いただいて。一気にお客さまが増えていくんです。今ではアロマをはじめ、オーガニックだったり、ナチュラル感を重視した5件のサロンを都内にひらいています。
- ― 最近では、ハードワーカーに向けた、セルフケアメソッドといったテーマの講演も行われていますね。
- 吉川 私が主宰しているサロンやスパに来るお客様は、皆さん、キレイになりたいというだけではなく、癒しを求めて来られることも多いんです。特に普段働かれている方は仕事のストレスもあってね。日々の生活の中で自分でも簡単に出来る、足のむくみを取るマッサージだとか、セルフケアを教えられたら、というのがきっかけです。又、ストレスをケアするという面で大事なことは、自分を知ることだと私は考えています。自分は自分らしくしか生きられないから。自分の本当の姿を知って、それに見合った対処をすることが大切なんです。これは私自身もお世話になったのですが、アメリカの心理学のサーベイにPCM(プロセス・コミュニケーション・モデル)というものがあります。このサーベイでは人のパターンを6つのキャラクターに分けているのですが、自分がどのキャラクターなのかを認識しておくだけでも違います。自分のキャラクターを理解していれば、どんなときに一番自分が心地いいか、わかるんです。そういったお話をしていますね。
- ― 自然と五感もキーワードになっていると聞いています。
- 吉川 そうですね。とりわけ日本のビジネスの世界にいる人には、とても欠けているキーワードだと思っています。人間が癒されるのは、自然の中なんです。本当は。だから、もっと自然にふれあわないといけない。そしてそのためにも五感を高め、磨くこと。危険を察知するだけではなく、心地よさを察知するのも五感です。できるだけ五感を意識してほしいですね。自然の近くに行く。植物などの自然のマテリアルを近くに置く。そしてフレッシュなものを食べる。パチっとか、プシュっとか音のするものは食べないこと(笑)。一駅歩いてみるとか、風を感じてみるとか、季節を味わうなど、自然を意識するだけで日々の過ごし方が変わるんです。会社にあるグリーンが、毎日元気かどうか見てあげる、でもいい。五感を感じられる暮らしをすることで自分も力をもらえるものなんですよね。私もよく森林浴にも行きますし、自然と出会うための旅にも出ます。
- ― やっぱり自然なもの、というのは身体にいいものなんですね。
- 吉川 「オーガニック」という言葉は、最近食品やコスメなどでもよく聞くキーワードになってきましたが、その主役は、植物です。私達は、地面から直接、ビタミンやミネラルをいただくことはできませんが、植物を食べたり、飲んだり、塗ったりすることで、その恩恵にあずかることができます。アロマテラピーで使う植物の香りは、植物が地面から吸い上げた生命力そのものですし、それを煎じたものを人間がいただいている、というのが漢方薬。コスメにしても、本当に自然なものというのは、つけたときの感じがまったく違います。それこそ、フリーズドライでお湯を入れるインスタント味噌汁と、ちゃんとおだしをとった湯気の出ているおみそしる、くらいに違います。また、漢方も自然から生まれたものですし、効きますよ。更年期障害も、私は漢方で乗り切りました。漢方は前に飲んだけど効かなかった、という声も聞くことがありますが、それはそのときの自分の症状にきちんと合った漢方を選ばなかったからです。漢方は、薬剤師が扱えるだけでも221種類もあります。信頼できる専門家に相談して、自分に合ったものを選ぶ必要があります。自然のものは、うまく付き合えると非常に効果的なんです。
- ― 今後はどのような展望を抱いておられますか。
- 吉川 オーガニックコスメの魅力をより広く発信していきたいですね。もっとトータルに人々のライフスタイルに入っていくことができるものだと思っているんです。私自身、それを取り入れて本当にいいと思うものを紹介していきたいです。又仕事内容も、今までたくさんのスタッフと一緒に取り組んでいた仕事から、よりパーソナルなものに少しずつ変えてきています。平均寿命なら86歳まで生きられるわけですし、私はおばあちゃんになっても、ずっと新しいチャレンジをしていきたいんです。自分のチャレンジが、すべて経験になって、人に提案できるものになっていく仕事ですからね。
美の逸品
「アロマは私の生活の一部ですね。
名前がおもしろいのも虜になった理由なんですが、サンタルウッドって何だと思いますか。白檀のことです。初めて聞いた時は、なんのサンダル~?なんて笑っちゃいました。これには保湿、殺菌効果がある。ネロリはビターオレンジの花からできていて、お肌につけるとアンチエイジングの効果があるんですよ。名前と香りと効能を見ているだけでも楽しい。アロマって、いろんな楽しみ方、使い方ができるんですよ」
吉川千明(よしかわ・ちあき)よしかわちあき
美容家
ジュリークショップ青山、白金台、ビオ・パスカルなど、ナチュラル感を重視した 5件のサロンを都内に主宰するパスカルコミュニケイションズ取締役・ディレクター。 チューリッヒに本部を置く、エステティック…
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