「話題のビジネス本」第八回目は、山口周さん著『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?経営における「アート」と「サイエンス」』 (光文社)をご紹介します。
「分析をすること」、「化学反応を起こすこと」などのように、「サイエンス」という言葉の中にはビジネスに通じるキーワードを多く感じますが、経営における「美意識」と「アート」とは一体どういう意味なのか。この本を手にした時、とにかくそんな疑問を私は抱きました。
山口さんは、本書内において、長く「論理」や「理性」に重きを置いてきた日本企業はいま、海外企業に押されて苦境の中にある。こうした問題の根本には、数値目標や言語化して説明できる「サイエンス」だけを追求してきたことがあるのではないか、と疑問を投げかけた上で、こうした苦境を乗り越えるヒントとなるのが、「直感」や「感性」の領域、すなわち「美意識」であると記しています。
現代社会において、文明、文化の発達により、様々なモノが飽和状態にあり、ビジネスにおいてはいかにその隙間を探し、差別化をした展開をしていかないと生き残れないという話を私もよく耳にします。
ではそのようなとき、どういった考え方をしたらいいのか。山口さんのおっしゃる「サイエンス」で導き出された答えは万人が行き着くものであり、差別化ができない。一方で「アート」で導き出されるストーリーや世界観はコピーされないものである、という言葉に強くそのヒントが隠れていると感じました。
私自身、社会人になってからいかにロジカルな考え方を身につけ、筋道を立て、仕事を遂行できるかという思いを強く持っていましたが、本書を読み、これから社会の中心で活躍をしていく人は、誰かが決めた外側の基準(常識)だけじゃなく、自分が信じる内側の基準(真善美)で判断ができる人になっていかなければならないと強く刺激を受けました。
本書の良いところとして、勿論内容もですが、初めの章で「忙しいあなたへ」と銘打って以降に語られる各章の要点を簡単な解説とともにまとめられています。そこだけでも十分に役に立つ考え方を学ぶことができますので、忙しい皆様にも是非お勧めです。
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