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AI(人工知能)やIoT(Internet of Things=さまざまなモノがインターネットに接続すること)など、世界を取り巻く環境は大きな変革期を迎えています。今まで常識だった社会システムがまったく違う形に変わり、しかも変化のスピードが加速、2045年には「AIが人間の能力を超える」などという指摘もあるほどです。今の子どもたちはそのような未来社会の中でおとなになり、社会の中核を担っていかなければなりません。
予測不能な社会を生き抜くためには、今の時点で真の「生きる力」を養い、あらたな世界へ挑戦するための土台を作る必要があります。
子どもたちの「生きる力」を養うために、家庭においてはどのような教育が必要なのでしょうか?
平成30年度国公立大学入試問題に採用され、スマホやAI先進国の中国でも翻訳出版された『スマホ廃人』(文藝春秋社)の著者、ジャーナリストの石川結貴さんに、これからのAI時代の家庭教育に関してお話をお伺いしました。
AIの発達により、どのような時代が到来されると思いますか?
今よりはるかに便利な社会がやってくる
AI(人工知能)という言葉を聞いて何を思い浮かべますか? 「自動運転」とか、「AIに仕事を奪われそう」とか、なんとなくのイメージはあっても、具体的なことはよくわからないという方も多いかもしれません。実際、技術の進歩や社会の変化がどうなるのかは未知数と言えるのですが、可能性の高いものをひとつ挙げてみましょう。それは「今の子どもがおとなになったとき、今よりはるかに便利な社会になっている」ということです。
今、ふつうにある仕事がなくなり、あたりまえの日常が大きく変化する
ここで一旦、スマホの話をしてみましょう。今、ほとんどの人がスマホを持ち、毎日あたりまえに使っています。ところがスマホは、私たちの社会に浸透してまだ数年しか経っていないのです。iPhoneの国内販売がはじまったのは2008年7月。当初はなかなか普及せず、利用が拡大したのは2013年以降と言われています。
こんなふうに短期間で身近になったわけですが、手のひらサイズの小さなスマホは私たちの生活を大きく変えました。時計にカメラ、スケジュール帳やアドレス帳、メモや録音もスマホが代用してくれます。SNS、音楽、動画、ゲーム、ショッピング、天気、時刻表、絵本や知育など多種多様なアプリがそろい、サイフやクレジットカードの機能も備わっています。
こうした実態が何をもたらすか、例としてカメラで考えてみましょう。
みなさんはスマホを持ってから、以前使っていたデジカメで写真を撮らなくなっていませんか? だとしたら、わずか数年で日常生活から「カメラが消えた」ことになります。
これをAIに置き換えて考えると、「今、ふつうにある仕事がなくなる」、「あたりまえの日常が大きく変化する」ことが現実味を帯びてくるはずです。
あたりまえの日常が大きく変化するAI時代を子どもたちが生き抜いていくために、どのように育てていけばよいのでしょうか?
「AIが自動翻訳すれば、英語の勉強は必要ない?」と聞かれたら
AIがもたらす変化は、単に「便利な社会になる」というだけではありません。
たとえば教育の分野では、個人の習熟度に応じたカリキュラムや学校以外の場所(例:インターネット通信教育)での授業、AIによる指導や進路判定が本格化すると言われています。
すばらしい面もあるのですが、一方で問題点も少なくありません。「学んでいることがすぐに古くなって使えなくなる」とか、「せっかく身につけたスキルをAIが簡単に代用してしまう」などの可能性です。
たとえば英語。私が取材する中高校生も一生懸命勉強していますが、ときどき彼らからこんな質問を受けます。
「英語の勉強って意味あるの? 僕たちが社会人になって働くころには、AIの自動翻訳が進んで、日本語は瞬時に英訳されるようになるでしょ?」
将来的な展望や今後の生き方を一緒に考える
もしみなさんのお子さんがこんな質問をしたのなら、どんなふうに答えられますか?おそらく激変するであろう20年後、30年後の社会をどう生きるか、親子で話し合っているでしょうか?
日頃、家庭内でこうしたコミュニケーションがあるかどうか、将来的な展望や今後の生き方について子どもと一緒に考えているか、これらはAI時代を生き抜くための大事なポイントなのです。
人としての普遍的な能力を家庭で育む
AIは画期的な技術革新と社会構造の変化をもたらすと予想されていますが、一方でその使い方や利用方法について十分に考えていく必要があります。どれほどすばらしい技術も、使い方を間違ったら悲惨な事態を招きかねません。AIが武器になり本格的なサイバー戦争が起きれば、世界は破滅するという指摘もあります。だからこそ利用する私たちの人間性、正義感や道徳心、豊かな思考力や正しい判断力が重要になってきます。
いわば真の「生きる力」が求められますが、ここで大切なのが家庭教育、人としての基本的な土台をしっかりと作るための教育です。それは「普遍的なものを育てる家庭教育」です。
どれほど時代や社会が変わろうと、根底で変わらないもの、普遍的なものが必ずあります。たとえばおにぎりは、「1000年前から日本のファーストフード」などと言われます。昔からずっと愛されつづけ、おそらくAI時代になっても変わらず食べられていくでしょう。
今も、そしてこれからより大切になっていくのは、まさにおにぎりのような普遍的な家庭教育です。体と心、優しさや思いやり、挑戦や努力、普遍的な子どもの育ちをしっかりと支えていくことが大切なのです。
先ほどの「英語」について考えるなら、AIの自動翻訳だけで本当のコミュニケーションはできません。人と人とが真に交流するためには、自分を表現する力や相手のことを理解しようとする力、互いに協調したり、学び合ったり、信頼しあえる感性が必要です。技術とは別の、「人としての普遍的な能力」が大切、そんな家庭教育を目指して、子どもとともに力を合わせてください。
石川結貴いしかわゆうき
ジャーナリスト
家族・教育問題、青少年のインターネット利用、児童虐待などをテーマに取材。豊富な取材実績と現場感覚をもとに、多数の話題作を発表している。 出版のみならず、専門家コメンテーターとしてのテレビ出演、全国各…
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