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講演など、人前でお話をされるときに緊張した経験はありますか?またそのエピソードを教えてください。
私は大学時代に演劇を専攻していたこともあり、昔から比較的人前に出た経験が多く、緊張には慣れている部分もあります。それでもやはり講演の場となると、心臓がドキドキしたり、手足が震えたりするような思いをすることもありました。
具体的には例えば、
・大きなホールの舞台 ・初めての内容 ・冷気が漂う会場
などで、感じた経験があります。
「大きなホール」というのは、会場が大きいからとか人数が多いからというより、お客様の顔が見えにくいからです。舞台に強い光が当たり、客席側が暗くなっていると、舞台上からはほぼ何も見えないこともあります。相手の顔が見えないということは、反応が全く分からない。暗闇に向かってボールを投げているような、不安に似た緊張とでもいうのでしょうか。
「初めての内容」は、やはり慣れていないというのが大きいです。なにせ初めて話すことが多いので、口が慣れておらず、かなり考えながら話すことになります。余裕の少なさからくる緊張ですね。
「冷気が漂う会場」というのは、空調のことではなく、場の雰囲気です。当然ながら、講演でも研修でも、来たくて来ている人もいればそうでない人もいます。会社の都合などで嫌々ながらも仕方なく来たという人の割合が大きいと、場の空気もかなり冷えています。そういう空気は始まる前にすぐ分かるので、そこにどう入っていってどうやってその空気を崩していこうかという、武者震いにも似た緊張があります。
緊張すると「失敗したらどうしよう」と思いがちですが、後で振り返ってみると、緊張感を感じた時の方が、より良いパフォーマンスができていたり、反応がよかったりといったことがあります。
緊張というものは、恐れるのではなく、うまく活用することで、失敗よりむしろ良い結果につなげていくことができるものだと思います。
人前でお話をされるうえで、心がけていることは何ですか
“相手の反応をしっかり見る”ことと、“伝えることを楽しむ”ことは常に心掛けています。
誰だって、聞きたくもない話を延々とされたら苦痛です。どんなことに興味があって、どんなことを聞きたいと感じているか、それは反応を見ているとだんだん分かってきます。そこを感じ取りながら、時には取り入れるポイントや事例などをその場で差し替えることもあります。少しでも興味を持って聞いていただくことを大事にしています。
そして、何より自分自身が楽しむこと、これは一番大事だと思っています。こちらが楽しめないことを、聞いている人が楽しめるわけはないですよね。
例えば、『食レポ』と呼ばれる、テレビなどでレポーターやタレントが料理を食べ、その場で味などの感想を言うというものがあります。見たことがある方も多いのではないでしょうか。あれをイメージしてみてください。
そのレポーターが、大して美味しくもなさそうに食べて、理屈を並べて延々と食材の説明などをしていたらどうでしょう。聞きたいのは「どんな味か」「どんな食感か」「どんなものに似ているか」等なのに、くどい食材の説明は聞きづらいだけかもしれません。さらに美味しくもなさそうな態度では、それを見ていて自分もそれを食べてみようとはなかなか思わないのではないでしょうか
とはいえやり過ぎもわざとらしくて逆効果ですから、必要以上にやることはありません。でも、少なくとも聞きたいことを言ってくれる方が興味を持てるし、美味しそうに食べているから自分も食べてみようかという気にもなります。
人前で話すときは、相手の反応をしっかり見ながら、自らがまず楽しんで伝えることにより、会場に一体感を作ることを大事にしています
どうしてそのポイントを心がけることになったのか、エピソードも含め教えてください
以前、会社員として働いていた時に、私自身もたくさんの講演を聴いたり、研修に参加したりする機会がありました。とても心に残るものもあれば、ひたすら眠気を堪えたものもありました。同じような内容なのに、伝える人によって興味を持てたり持てなかったりということもよくありました。
「偉そう」「一方的」「つまらなそうに話す」という人は総じて評判が悪く、内容は覚えていないのにその感じの悪さだけは語り継がれていくという、何とも残念なことになっていました。
話を聞いてもらうということは、相手の時間をいただいているということです。
話す時にはその責任をしっかり持って、何を伝えるかだけではなく、“良い時間にするためにはどうしたらよいか”を考えることが、相手を大事にするということなのではないでしょうか。自分自身が聴講者としてそう思ったからこそ、自分が話すときにはよりそういった部分に意識を持つようになりました。
人前でのお話に慣れていない方に向けて一言お願いします!
スピーチのレッスンなどをすることもあるので、「どうしたら人前で緊張しないようになれるか」というご相談をいただくことが多くあります。私はいつもこう答えています。「緊張も大事なスピーチスキルですよ」
適度な緊張は適度な緊張感を生み出し、それがよいスパイスとなってスピーチにメリハリをつけたり、新鮮味をもたせたりすることにつながります。緊張しないということは、その分ダラッとして聞こえたり、全体的に緩い雰囲気を生み出したり、印象に残りにくいという側面もあるものです。緊張は悪いことではない、という前提で、むやみになんとかしようとしないことがまずは大切です。
とはいえ、極度な緊張はパフォーマンスを下げることも確かにあるので、頭が真っ白になりそうなときには、深い呼吸を3回してください。緊張すると呼吸が浅くなり、取り込む酸素が減ってしまうために、さらに苦しさを感じて焦りに繋がったりするものです。
緊張しているときに息を吸うのは結構大変なので、まずは吐くところから始めてください。とにかく今ある空気を全部抜く。そしてゆっくり吸う。「何秒で」などはあまり考えなくていいです。楽にやって力を抜くのが目的ですから、そんなに厳密にやる必要はありません。とにかく今でき得る範囲でゆっくりゆっくり吸う。同じ速度でゆっくりゆっくり吐く。これを3回。それだけでもだいぶ落ち着いて話せる状態になります。
そしておすすめなのが、マイクに挨拶すること。始まる前に、マイクに心のなかで(よろしくね)と言って、マイクと仲良くなります。もちろん、マイクは人ではありませんから、あくまでもイメージです。でも、場を味方にするイメージを持つと、ちょっとした安心感が生まれやすくなり、話もスムーズにしやすくなりますよ。
実際、演劇の世界でも、本番前には必ず舞台に向かって深々とお辞儀をして、挨拶してからその日を始める、という役者さんもたくさんいらっしゃいます。イメージの力は大きいものです。ぜひお試しください。
山本衣奈子やまもとえなこ
プレゼンテーション・プランナー
<ご本人からのメッセージ> 私は大学時代は演劇を専攻、在学中にイギリス・ロンドン大学のドラマ科に留学しました。演劇というと、ストイックな役作りや身体表現をイメージされることが多いのですが、演劇は総合…
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北野琴奈
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