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~現場にかける熱き情熱~強い組織作りに必要なものとは?

寺廻太

寺廻太

PFUブルーキャッツ監督

今月は、前全日本男子バレーボール監督、バレーボールプロコーチの寺廻太さんです。

寺廻 太(てらまわりふとし)
バレーボールプロコーチ

1958年1月22日広島県生まれ
崇徳学園高等学校卒業
明治大学政経学部政治学科卒業

【バレーボール歴】

高校時代    エースプレーヤーとして、春高バレー、高校総体、国体と三冠達成

大学時代   センタープレーヤーとして活躍

昭和55年   入社と同時に日本電気男子バレーボール部入部

昭和55年

|       日本リーグで(16,18,19回)オールラウンドプレーヤーとして活躍

昭和61年

昭和62年   コーチ専任

昭和63年   監督に昇格(NEC)

平成8年   11月  全日本男子チーム監督就任

平成12年    シドニー五輪予選最終戦をもって監督を退任

平成12年 12月

 |       韓国男子バレーボールの三星火災にコーチ就任

平成13年 3月

平成14年 5月  チャイニーズ・タイペイ男子ナショナルチーム監督就任

~現場にかける熱き情熱~強い組織作りに必要なものとは?

――全日本の監督を以前なさっていた時、加藤陽一選手ですとか、中垣内祐一選手ですとか、そういった一流の選手達をいろいろなチームから集めて、非常によくまとめていらしたという印象があるんですが、監督経験を通しまして、あらゆる個性が集まった一つの組織をまとめる上で、気をつけていた点はなんですか?

 そうですね、例えば企業やある組織で仕事をする上で、目標設定はとても重要なことだと思います。私の場合は、その目標設定が単純かつ明快で、当時はシドニーオリンピックに出場するというのが、最大の目的でした。結果的にはその夢は叶いませんでしたが、最低でも出場しなければならない、という目的のために選ばれた選手であり、集まってくる選手達は、必ずオリンピックに出るという目的意識を確実に持ってました。幸い、非常にモチベーションの高い選手達が集まっていたというのは大きかった、と思います。

そして、気をつけていた点と言えば、やはり私が指導する際に、「自分の指導スタイルというものを、選手と話合って理解してもらうこと。」ですね。

必ず一つのチームには、監督がいて、コーチがいます。私が監督としてどのようにチームをまとめるか、という責任がありますから、一つの目標に向かってやる上で、やはりこっちが思うバレーを理解してもらわなければならないわけですね。そういう意味でも、自分が理想としているバレーを追及していく上で、選手とのディスカッションは必須になってきます。ですから、理解してもらうことにおいてはしっかりと時間を費やしたつもりでいます。

――コミュニケーションがまず大事だということですね。

そういうことになります。なぜこのようなディフェンスの体制をとるのか?技術的に言えば、こうなる、最終的にはこうなっていくんじゃないかな、というのをまず理解してもらう。今もしできないとしても、最終的にはこのようになって行かなければならないということを言っておく。そして精神的な問題で言えば、「必ず自分達はオリンピックに出場するんだ。」という気持ちを植え付けることが、私の仕事であったし、そのことに関しては間違ってなかった、と今も思います。
 

  ――全日本の監督になった時は、随分と若い監督だと、話題になりましたね。

 実は、私がなるとは思っていなかったんですよ。話が来た時には、何かの間違いじゃないかな?って思ったんですよね。最初に感じたのは、引き受ける、引き受けないではなくて、客観的にこれは大変だな、というのがすごく強く頭にあって。その次には今じゃないと自分にはこの話は来ないんじゃないかな?っという風に思ったんですよね。

 自分がNECの監督として指導をしてきて、何回も優勝した中で、ちょうどチャンピオンを維持していく、という大きな目標がありました。そんな中でも、常に自分はもっと上のレベルでやりたい、という気持ちが非常に強かったものですから、最終的には、大変というよりはすごくありがたい、という風に思いました。

 それに、基本的にチームを強くするということはNECにしてもナショナルチームにしても同じなんですが、そのチームによってプレースタイルが変わってきます。その意思統一をしっかりしなければならない、ということは注意しましたね。

プライドが高い選手はもちろん何人もいますし、その中で僕はナショナルチームの経験はありませんので、中垣内選手や真鍋選手のような、非常に実績のある選手を指導していく上で、彼らに負けない技術論であるとか、確固たるものがないと監督は務まらなかったと思います。

 ただナショナルチームを教える上での初期の問題としては、いろいろなチームから選手が集まって来てますから、自分のところの選手に対しては強く言えることも、他のチームの選手にはなかなか言えなかったことなんかもありました。まあ、だんだん自分のチームになっていくに従って、そういう難しさからは開放されましたけれど。

また、初めてナショナルチームの監督をやって、日本の国ということに対してすごく意識を持ちました。国旗に関しては、非常に重いと感じました。

 

――NEC監督時代には、アメリカまでコーチングの勉強に行きましたよね。
    そこで印象的な出逢いがあったと聞きましたが…

 そうですね。私の人生において、とても重要な出逢いがありました。そもそもアメリカにはブロックを学びに行ったんです。ブロックとはなんぞや?ということをね。だから、すごく分かりにくいことを教わったわけではない。 ただ、そこで学んだものは非常に大きかったと実感してます。

つまり、ものの見方というのは、自分がこうだ、と真っ直ぐから見る以外に横から見たり、斜めから見たり、後ろからも見れるんだということが、そのコーチと逢って、ブロックのシステムを聞いた時に、ああなるほどな、と思えたんですよ。自分はどうしても前から、ようするに真っ直ぐに自分がこうだ、と思うバレーボールを見ていたんですよ。「自分の視野がせまかったなぁ」とその時は素直に入ってきましたね。物の見方というのは、いろんな角度から見なければならない、ということをその人から教えてもらいました。

 そして、指導方針としては選手を「誉める」ということを学びましたね。自分は厳しく指導されて育ってきて、選手に対してもそういう指導方法を取ってきたんですが、その人に逢った時に誉めることの大切さを、身を持って体験させてもらいました。その方はブリガミヤン大学のカール・マクラウンという教授。彼に出逢わなかったら、と思うとちょっとぞっとしますね。ナショナルチームの監督にもなっていなかったと思いますし、優勝できたかどうかも分からないし。そういう意味ではすごく今も感謝しています。

――他の国にもいろいろ勉強のために訪れてますよね?

 アメリカで味をしめたんですよ(笑)。アメリカから帰ってきて、チームの監督として頑張っている頃、ブラジルのチームがオフェンスがとても素晴らしく、多彩な攻撃をするチームだったんです。バルセロナオリンピックのチャンピオンにもなったんですが。

それでもうアメリカのブロックで味をしめてますから、これはブラジルに行っても、教わってくるものがあるだろう、と思い立ったわけですね。今ちょうどブラジルの女子ナショナルチームの監督が、その当時は男子の監督だったんです。私のブラジル滞在は1ヶ月強ぐらいいったのかな、その間中ずっと、彼が私に付いてくれました。彼といろんなチームを回りながら、ブラジルのバレーボールを勉強したんですね。

 そしてまた、帰ってきたらブラジルの良いところを自分のチームにプラスアルファする。自分が教わってきたこととか、自分が思う事はすぐやるんですが、それ以外に、他にもいいことはないだろうか?と常にいろんな方向から考えてましたね。そんな姿勢を持つきっかけになったのはアメリカへの留学だったと思います。

――日本の監督の中で、監督をやりながら、海外に足を運び、勉強してくるというような行動力のある方って少ないようにと思うのですが…

 そうですね、自分がやっているスタイルを一概にこうだ、という話ではないですが、自分がやって来たことは、少なくとも自分にとってはプラスになっていると思います。 自分自身が向上することで、選手にもより多い情報が監督として与えられる、そう思うんですよ。自分の中で考えて、自分が作り出す練習方法とか、これは一つの手だと思います。ただ私が思う事は、いろんなところで、いろんな練習方法で、いろんなバレーをやっていて、 例えば、小学生を教えていても、自分のプラスになることってあるんだな、と思うんですよ。

だから、自分自身が常に向上心を持って、プラスアルファの情報等を集め、それを積み重ねることによって、教えていきたい。自分も常に成長していきたいというのは思いますね。それはもしかしたら自分に確固たる自信がないのかもしれない、とも思いますけれど。

でもこれが僕のスタイルです。けれど、僕のスタイルと言っても、これは常に変化する可能性を秘めているんですよ。指導方法に「誉める」という要素を重視するようになったのも、変化ですしね。だから、反省と成功の繰り返しの中に常に自分がいます。

自分のスタイルの中で、例えば僕がナショナルチームの監督をやって、あの時こうすれば良かった、とかあの時のやり方は間違ってたな、ということももちろんあるんです。だから良い方向に変化したいというのは常にあります。変化し続けて行きたいっていう気持ちが強いんです。逆に強固にこれが自分のスタイルだ、と決め付けるようなものはない、勿論その中で大事にしたいものはありますので、譲れないものもありますが、常に柔軟な心を持っていないと、多角的な視野は保てません。指導方針でも、やはり良いものは取り入れていきたいというのは凄くありますね。

――ではやはり、現場に戻りたいというお気持ちが強いのでしょうか?

やっぱり現場っていいんですよ。本当に快感なんです。体験しないと分からない快感だと思うんです。試合前のとてつもない緊張感から、試合途中のエキサイティングな感覚、これは日常生活ではあまり味わえないですよね。

だからそこは裏を返せば非日常的なものですので、居心地が良い場所という訳ではありません。しかし居心地は良くないけれど、離れてみるともう一度そこに行きたい、と心底思えるっていうのかな。現場って一回経験してしまうともうだめですね。

そして監督をやる上で一番重要だと思うのは、これは繰り返しになりますが、選手とちゃんと理解し合うということですね。言葉だけではなく、向上している状態をしっかりと選手に実感させる。

また、一人の選手に対して真剣に向き合い、事にあたるということ。必ず一生懸命にやってる姿勢というのは相手に伝わりますから、いつか自分に返してくれるようになります。だから、真剣に事にあたるという姿勢は、最低条件なんじゃないかな、と思います。

これでいいや、と妥協するとぶつかり合いはないんですよ。逆に、お互いが真剣に自分の意見を通そうとすると、ぶつかり合っちゃうんです。どっちも引けなくなって。でもぶつかって初めていろんな所が見えてくる。だから選手とぶつかるんですよ。 それが僕の監督としてのこだわりですね。


――素晴らしいお話をありがとうございました。

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寺廻太

寺廻太

寺廻太てらまわりふとし

PFUブルーキャッツ監督

元全日本男子バレーボール監督、韓国バレーボールプロリーグ プロコーチ。国内では男女両方の監督を務めるなど、コーチとして高いスキルを持つ。男子ではNECブルーロケッツ、女子ではJTマーヴェラスといずれも…

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