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人生最大の危機を教えてください。
ひざの手術など幾度の怪我を経験してきたのですが、命に関わる一番の危機は腎臓がんになった事です。
その時の状況や危機が発生した原因を教えてください。
2006年6月に札幌大会でチャンピオンになり、東京に帰ってきて、その2週間後に健康診断がありました。その時に「腎臓に腫瘍ができています」と言われたのですが、がんは高齢者がかかるものというイメージだったので“自分は大丈夫だろう”と軽く考えていました。しかし、再検査で腎臓がんと診断され、まさか自分ががんだとは夢にも思わなかったので驚きました。
チャンピオンになっていきなりがん・・・“天国から地獄へ”とはまさにこの事でした。医師からは「すぐに手術しましょう」と言われたのですが、脳梗塞で欠場していた仲間の大事な復帰戦でタッグマッチを組むことが決まっていました。なので「その試合だけ出場して、手術します!」と言ったら、めちゃくちゃ怒られました(笑)
でも、どうしてもその試合に出たかった。そこで試合に出る許可をとる為に、セカンドオピニオンを何件か受けましたが、試合に出すことはできないと断られました。腎臓がんは厚い膜に覆われているので、一部だけ取り出して進行性が早いか遅いかを検査できない。摘出するしか方法はないのです。進行性の早いがんなら今すぐ手術しないと危ない、今なら助かりますと全員に言われました。それでも粘っていると、
「試合中に蹴られたりして、臓器が破裂して、がん細胞が身体に飛び散ったらどうするんですか?」
と聞かれ、チャンス!と思い、
「自分で責任はとります!」
と答えました。そうすると、
「貴方はそれでいいかもしれません。でも出場を許可した会社の社長や家族はどうなるんですか?責任はどう取るんですか?」
と言われ、ハッと気づきました。自分の親しい人の責任になってしまう、迷惑をかけるわけにはいかない。
そうして手術を決意しました。
危機とどのように向き合い、乗り越えたのですか?
ファンの声援と当時付き合っていた彼女(現在の奥様)の支えが大きかったですね。
がんと告知されて、頭が真っ白になって家に帰ると彼女が遊びに来ていて、「どうだった?」と聞かれました。「がんだった」と伝えると、「がん=死」というイメージが強かったようです。ショックを受けて泣きじゃくった後、部屋を出て行きました。 僕自身も死のイメージが強く、呆然として、気が付いたら何時間も経っていました。すると突然彼女が帰ってきて、目の前に婚姻届を差し出して「結婚してください!」と言ってくれました。嬉しかった・・・・でも死を目の前にした男が彼女を幸せにできない。そう思い、涙をのんで断りました。でもその次の日から、彼女が病院もセカンドオピニオンも全て付き添ってくれて、用事があって付き添えない時は僕の親に連絡を取って都合をつけてくれたりと、献身的にサポートをしてくれた。ものすごい力になりました。
そして、“復帰したい”という気持ちを後押ししてくれたファンの存在。
励ましの手紙を読むと、何度も背中を押される思いがしました。その度に戻りたい、戻らなければ・・・と思ったのですが、それまで腎臓がんで復帰した選手は誰一人としていなかった。先生にも「戻る為の手術じゃない、生きる為の手術です」と言われ、復帰は無理だと諦めていました。でも、自分の帰りを待ってくれているファンのみんながいる。誰もやってないなら、自分が一号になろうと決められたのです。
そこから毎日毎日、検査の度に「復帰どうですか」「復帰できますよね?」と言い続けました。その度に「ダメに決まってるでしょ!」と断られましたが、粘り続けて半年間。先生が「一緒にがんばりましょう」とついにOKが!でも、数値が悪くなったら即ドクターストップかけますからね、とも言われましたけど。
最大の危機に直面したご経験から、どのようなことが得られましたか?
やらないより、やって後悔したほうがいい。
もちろん、失敗すると思ってチャレンジするという事ではないです。成功があると全力で信じて信じて、その上で失敗するのならしょうがない。やらなかった方が絶対後悔する。
それと、病気になった時には必ずセカンドオピニオンを受ける事をお勧めします。今回セカンド、サード、フォースオピニオンまで受けたのですが、そのおかげで冷静になり、どんな意見でも聞き入れる事ができました。ファーストオピニオンだけだったら試合に出ていたでしょうね。冷静になる事=病気に立ち向かう心構えができる、という事を学びました。
最後に、人生の危機に直面している人へ向けてアドバイスをお願いします。
“絶対に諦めないで”
言葉に出すのは簡単だけど、これが結構難しい。人にどう言われようが、人にどう思われようが、自分自身がどうしたいのか、どうすべきなのか、それを一番に考えてほしい。
自分が諦めた瞬間が“終わり”なのだから。
小橋建太こばしけんた
株式会社FortuneKK代表取締役
1990年代後半からプロレスラーとして一世を風靡。がんや数々のケガに悩まされ、リング内外で壮絶な戦いを繰り広げてきた。 2001年1月に膝の手術のため欠場するも、翌年2月にアスリートでは前例のない復…
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