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子供の自立を育てる セルジオ越後流 教育の極意

セルジオ越後

セルジオ越後

サッカー解説者

辛口なサッカー解説でおなじみのセルジオさんは、多くの子供達にサッカーを好きになってもらいたい、と全国をサッカー教室でまわっています。その数、今までで50万人以上。サッカーの魅力や親子の心を結ぶスポーツの可能性を伝え、反響を呼んでいます。

技術のみにとどまらず、触れ合いを大事にする、というセルジオさんの指導、そこから学ぶ子供達との接し方、今の教育に関してセルジオさんのご意見を伺いました。

セルジオ越後(せるじお えちご)
 サッカー解説者

生年月日:1945年7月28日
出身地:ブラジル・サンパウロ生まれ(日系2世)

18歳でサンパウロの名門クラブ「コリンチャンス」とプロ契約。
非凡な個人技と俊足を生かした右ウイングとして活躍し、ブラジル代表候補にも選ばれる。
藤和(とうわ)サッカー部(現:ベルマーレ)でゲームメーカーとして貢献。魔術師のようなテクニックと戦術眼で日本のサッカーファンを魅了した。

来日当時から少年サッカーの指導にも熱心で、1978年より(財)日本サッカー協会公認「さわやかサッカー教室」(現:アクエリアスサッカークリニック)の認定指導員として全国各地で青少年のサッカー指導に当たる。

子供の自立を育てる セルジオ越後流 教育の極意

-サッカー教室の指導では、サッカーの上手なセルジオ先生と親しまれているようですが、今の教育に関してお感じになられることはありますか?

ある物事に対して、ちゃんとその理由を説明できない親が多いということですね。
私が全国を回っていると、「うちの子はいつもテレビの前でゲームばかりやっているんです。」という苦情をよく聞きます。サッカーを教えに行っているのに、何故か子育てについての話しも多いんです。(笑)

テレビゲームに関しての母親の本意は、害があるからさせたくない、というものでしょうけれど、でもそれを買ってあげたのは誰かと言えば、ご自身であったりするのです。それにテレビと言えば、家事の休憩がてら、お菓子を片手にテレビに食いついているお母様方もたくさんいるんではないでしょうか。昼ドラの視聴率を稼いでいるのは、世のお母さん方です。そんな姿を見て、子供は何を思うでしょうか?よく考えて欲しいとおもうのですが、問題はテレビゲームではなく、長時間やり続けることに伴う弊害が問題なんですよね。目が悪くなるとか、勉強に手をつけられないとか。それだったら、時間を決めて1日2時間までしかやってはいけないとか、途中で休憩をしなければいけない、等というやり方で解決してあげればいいのではないか、と思うんです。大人の社会が効率を第一に考えたせっかちな社会だから、つい悪いと言われたものを即座に悪い物と子供にしかりつけ、ちゃんと説明し、子供に分かってもらうことをしていないな、と思います。子供は以外に細かくて、親が間違った事や嘘を言うと見抜いていたりするんですよ。

-そう言えば、「大人ってずるいな。」そう子供の頃に思った事がありましたね。

正直言うと、私も自分の子供のゲームを借りてやってみたことがあります。それが面白くて、面白くて。 「やってみたことはありますか?」やってみればその面白さが分かるはずです。お子さんの立場に立って物事を考えれば、子供に対して出てくる言葉も変わると思うんです。それを世間が「良くない」と言っているという事象だけでせっかちに判断したりする。それでは、子供はちゃんと理解できないですし、同じことを繰り返します。

そして思うのですが、もし私が子供の時代にこういうものがあったら、間違いなく今の子供たちと同じように夢中になっているはずです。私が子供時代にテレビゲームをやっていなかったのは、我慢していたのではなく、なかったから、つまりその時代には存在しなかったから出来なかったのです。「私たちが子供のころは…」と話し出す方々がいますが、時代の差や文化の差をしっかりと理解出来ている大人が少ない、と思います。自分の子ではあるけれど、確実に自身の子供の頃とは違う時代に生きています。そういった時代の差を認め、今だから分かる古き良き時代を参考にすべきです。

-古き良き時代ですか…。セルジオさんの子供時代を少し教えて頂けますか?

私は、ブラジルで生まれました。両親は日本人です。産まれた時代だけでなく、国によっても価値観は変ってくると思いますが、ブラジルと日本という二つの国を比べられた経験を持っていて、凄く得したな、と思っているんです。人と違う経験を持っているから、ユニークだ、なんて言われるのでしょうけれど、その話を少し。

当時は、アスファルトの道路もなかったですし、貧しい生活で、おもちゃと呼ばれるものは全て手作りでした。自然の中で暮らしていましたから、現代の人たちから見れば羨ましがられるかもしれませんが、当時はそのありがたさも知らなかったし、不便だとも思いませんでした。

タイヤを押して遊んだり、竹を取りに行ってタコを作ったりしましたが、別に手作り自体が楽しかったわけではないんです。売っていなかったんです。もし近くのお店で売っていたら、作るなんていう、めんどくさいことはわざわざしなかったんではないかな。そう考えると、当時はテレビゲームがなかったから、あんな素朴な遊びをして、裸足で走り回るのが全てだったんです。

 

「なかったから、しなかった。」当時の心境はそうですか。
裸足というのも、今はなかなか出来ない世の中ですよね。
一部の学校でそういう事を精力的に取り組んでいるという話も聞きますが。

そう。子供自身が体験して、裸足は痛いから嫌だ、なんて考えることもない時代なんですよ。今はわざわざそうしようとは思わないかもしれないけど、何事もする前に親が危ないからだめって、やめさせてしまいますからね。

でも昔が良かった、とただそう思うわけではありません。不便な社会は安心もなければ、保障も保証もない。だから当時は亡くなる方も多かったんです。そんな中でもし生き残れたら、「たくましい」という称号をもらったようなもので、日々の生活で作られた免疫がプロの選手生活の中で役立ったと、今は思います。ですから、良い事も悪い事もあったんです。

ここで私が重要だと思う事は、私達が子供だった時、貧乏で親が忙しくて、子供にかまう暇がなかったということです。だから、山菜を取りに行くのも子供達だけで行った。ガキ大将なんていうのもいて、子供の社会があって、自分達で考えて動かなければダメな環境がそこにあったという事です。
教育の極意は、接近しすぎないで、ちょっと距離を取る、それに尽きると私は思います。それがなかなかしづらい時代ではないでしょうか。

 

-距離を取る、それはとても重要で、また難しいところですね。
子供達自身で考えさせる事としてセルジオさん自身の子育てでやっていた事などはありますか?

「子供のケンカは子供同士で解決させること。」だね。
よく子供がテレビのチャンネル争いでケンカをして、私にどっちがこう、とかどっちが正しいとか、いろいろ言ってくるんですが、そんな時はテレビを消してしまいます。そこで私は言うんです。「お父さんが悪かった。こんな悪い物を買わなければ、お前達はケンカをしないのに」ってね。そうすると子供達はしばらくは黙って我慢をしているんですが、自分の見たい番組が見られなくてうずうずしてきます。そこで、「チャンネルが決まったら見てもいい」と言うんです。そうすると結局は兄弟同士で話し合って、見る番組決めてくるんです。半分づつにしよう、とかいう打開策を見つけたりしてね。大人が間に入って、どっちが悪いなんて決めているのは一番良くない。自然に子供自身で考え、動く。そういった状況を日々の生活で作ってあげること、手助けしてあげること、それは今でも十分に出来るのではないでしょうか。環境適応能力なんかは、そういう所から学んでいくんだと思います。

 

-自立したたくましい人間に育てるためには、親が手を出し過ぎないということですか。
とても参考になります。
最後に、セルジオさんの解説はいつもジョークが混ざっていて面白いですが、
教育を考える上で、スポーツとの面白い関わり方はありますか?

 スポーツの良いところは、みんなで共通の話題で楽しめること。教育の場では運動会。一生懸命スポーツに取り組むことで、体力をつけたり、精神を養ったりと、いい事がたくさんあります。テレビでやっているサッカーの試合でも、あのプレーが良かった、とかあの選手の動きが良かった、悪かったなんて、自分がプレーをしていなくても、一緒に盛り上がれる。スポーツは年齢差を越えて楽しめますから、ワールドカップを観戦するのも、家族揃って見たりすれば、良いコミュニケ-ションにもなります。

こんなものも面白いかと思うのですが、ワールドカップを観戦するのに、サッカー場に行けなくても、近所の仲の良い人たち同士で楽しむという方法もあります。ブラジル戦はセルジオさんのお宅で、イタリア戦は西山さんのお宅で、なんて言いながらたくさんの料理を用意してパーティーのように、招待し合うのです。それぞれの料理を対戦国に合わせたりするのも、旅をしているようで面白いですよね。そうやって家族や地域の触れ合いを増やしたりも出来るんではないでしょうか。

要するに、教育も、日々の生活も、少しひねるだけで面白くなる、ということ。
頭を固くして考えるんではなくて、ちょっと柔軟に工夫すること。それを日本の皆さんには伝えたいですね。

ブラジルのことわざで「リズムに合わせておどりを変えなさい」というものがあります。音楽が変っているのに同じ踊りを続けていたら、合わないでしょ。味噌汁も具を変えれば、毎日食べられる。

それをヒントに、少しづつ変化をつけて行ったら、違う取り組み方が出来るんではないでしょうか。ユニークだって言われている秘訣を教えるとしたら、そんなところだと思います。

-素晴らしいお話をありがとうございました。

文・写真 :鈴木ちづる (年2月15日 株式会社ペルソン 無断転載禁止)

セルジオ越後

セルジオ越後

セルジオ越後せるじおえちご

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1945年(昭和20年)7月28日ブラジル・サンパウロ市生まれ(日系2世)。18歳でサンパウロの名門クラブ「コリンチャンス」とプロ契約。非凡な個人技と俊足を生かした右ウイングとして活躍し、ブラジル代表…

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