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「池上彰の講義の時間 高校生からわかる『資本論』」ー池上彰氏ー

思春期真っ只中の悩める中学生・高校生に、そして、その保護者の方、また、教育関係者に向けて、「講演会のプロが選ぶ!中学生・高校生にすすめたい本」をご紹介いたします。

第十回は、ジャーナリスト池上彰氏著『池上彰の講義の時間 高校生からわかる「資本論」 』 (集英社)です。

『池上彰の講義の時間 高校生からわかる「資本論」 』 (池上彰)

中学生・高校生にすすめたいポイント

本書は、池上さんが高校生に向けて、難解といわれるマルクスの「資本論」について実際に講義されたときのお話をまとめた本です。

「資本論」を通して今の社会を知る

「日本は豊かと言われますが、なかなかその豊かさを実感することができない。そう感じる方が増えているのではないのでしょうか」また、「資本主義は豊かさをもたらした一方で、非人間的社会も生み出しているのではないか。」と池上さんは投げかけます。

近年「格差社会」「非正規労働」「過労死」といった言葉がよく聞かれます。また、教育には、お金がかかり、さらには老後にも多くのお金が必要であるとのニュースもでています。
多くの人が、「日本は豊かと言われますが、なかなかその豊かさを実感することができない」「これからの日本がこの先どうなっていくのか?」そんな思いを抱いています。

その様な現状の中、150年前の当時のヨーロッパのことを書いているのにまるで現代の社会について述べているような「資本論」から、資本主義の本質を知る必要があるのではないか、歴史から学ぶ必要があるのではないかと池上氏は述べています。

資本主義の本質を知るためにも今回、資本論の中でも私たちの周りの身近なモノとお金についての部分をご紹介します。

商品の分析を行うことで世の中がわかってくる

マルクスは資本主義の世の中を以下のように考えました。

・資本主義の世の中はすべてのものが商品
・商品にはすべて値段がついている
・値段がついているからお金で買うことができる
・その「商品」を分析、研究することにより、私たちの生きる世の中がわかってくる

商品には価値がある-- 使用価値と交換価値

「商品」には「使用価値」と「交換価値」があると、マルクスは説いています。

使用価値とは

使用価値とは、使って役にたつということ。「食べ物を食べると、空腹をしのげる」「ものを使うことで効果が得られる」といったものです。使用価値があるということは、一方で交換価値も内在しているということとなります。

交換価値とは

交換価値とは、「使用価値」を前提に、ある商品とある商品を交換するのに値する価値の比率です。

例えば、リンゴとミカン。どちらも「食べる」という「使用価値」があるため、交換が成立します。しかし、リンゴと木の棒の間では「食べる」という「使用価値」が満たせないため、交換しようとはなりません。つまり、ある商品とある商品を交換するには使用価値が前提となります。

安定的に価値が保てる貨幣-- 貨幣の誕生

いろいろな商品は使用価値に違いがあっても、様々な商品とイコールで結んでいくことができます。すべての商品とイコールで結ぶことができる商品、それが貨幣となるわけです。

昔は稲や貝、塩などがお金として使われていましたが、社会が発展していく過程で稲や貝、塩などよりも安定的に価値が保てるなどの理由で、社会が貨幣を欲し、交換に一番便利な金や銀が貨幣となりました。

講演のプロから伝えたいこと

「賢者は歴史に学ぶ」-- 歴史から学んでみることも大事

今回ご紹介した部分は資本論の中でもほんの一部分です。
私が、お伝えしたいことは、「私たちが生きている現代を理解するため、過去の時代背景を学び、そこから学んだ知恵を現代に生かすよう工夫する必要があるのではないか」ということです。

池上さんは終わりにこんな言葉を紹介しています。

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」

歴史というのは「他人の経験の積み重ね」で、自分の経験もちろん大事ではありますが、過去の他人の経験からたくさんのことを学ぶ。これが歴史を学ぶ1つの大きな意義であると思います。

難解な「資本論」ですが、本著は非常にわかりやすく解説されておりますので原著を読む前の人も、原著で苦戦した方も一度読んでみてはいかがでしょうか。

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