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人生最大の危機 ~カレーハウス CoCo壱番屋 創業者・宗次德二~

宗次德二

カレーハウス CoCo壱番屋 創業者

人生最大の危機を教えてください。

何が起こるかわからない中、運よく67年も生きてきた今、自分にとっての最大の危機は?と振り返ると、私の場合は生まれたその日、1948年10月14日が最大の危機と言えるかもしれない。危機・苦難は、まさにその日から始まったと言える。中学卒業までの15年間、余りにも過酷な日々だったからだ。今でこそ‘人間に生まれただけでラッキー’‘日本に生まれ育っただけで幸せ’と思えるが、筆舌に尽くしがたい幼少期であった。

生を受け間もなく孤児院に入れられ、4歳の頃に養父母に引き取られた。本来ならば、幸せの始まりなのだが、養父は大のギャンブル好きで事業は破産。岡山県玉野市に夜逃げし、8歳まで生活したが、養父のギャンブル狂は収まらず、三度の食事も十分にはできなかった。余りの空腹に耐えかね道端の草を食べることもしばしば。その後、名古屋に移り住み、15歳の時に胃がんで養父を亡くすまで、恐らく名古屋で一番と思えるほどの、絵にかいたような貧乏生活を送った。

養父は、週三日程の日雇いの日当と生活保護の手当の大半をギャンブルで失い、そのため家賃や電気代は当然払えず、電気は切られっぱなし。安アパートは一年ほどで追い出された。そんな滅茶苦茶な生活であっても、唯一の家族である養父には気に入られようと言いつけには必死に応え、叱られないように、少しでも喜ばれるように一生懸命であった。幸いだったのは、そんな生活の中にあっても、友人たちや周りをうらやむことも、自分の境遇を嘆いたりすることもなかったのだ。幼いながらも、ひたすら我慢し耐え続けたことで、人生や経営において真に必要なことである姿勢や生き方が培われたと言える。

だからこそ、高校を卒業し18歳からの人生は、ほぼ思い通りの、いやそれどころか超が付くほどの出来すぎの人生に変わったように思う。勿論、それ相応の努力はしたが、それはまさに‘奇跡’のようでもある。

恐らく、人の一生を通して経験するだろう幾多の苦難や危機を、15歳までに終えてしまったと言える。幼少期に苦難と思えることを克服した経験が、後の経営者人生において計り知れない‘力’となったことは確かなのだ。

その時の状況や危機が発生した原因を教えてください。

全ては、天命であり運命、宿命であった。

危機とどのように向き合い、乗り越えたのですか?

今思えば、生まれてからの15年間は、この上なく不幸であり、不遇な日々であったが、幸いにもその最中にいた自分自身は不幸だと殆ど思ったことがなかった。時の流れと共に知らず知らずのうちに乗り越えたのかもしれない。

最大の危機に直面したご経験から、どのようなことが得られましたか?

たとえ、危機の最中にあったとしても、辛い、不幸だと思うことはなく、危機という意識すらなかったのだが、25歳で飲食業の道に入ってから、まさに活かされたと言える。その一つが「休まなくても平気。遊ばなくても平気。とにかく他人に喜んでもらいたい。」という強い思いでやり続けることができたこと。それは、私にとって最高に幸せなことだと思っている。

最後に、人生の危機に直面している人へ向けてアドバイスをお願いします。

何があっても諦めない。逃げ出さないで前向きな気持ちを持ち続けること。耐えること。立派な花を咲かせるための貴重な経験と考えること。

危機を克服すると、後に活かされる時が来る。ピンチは生き方や姿勢を変えてみるチャンスでもあるからだ。確かに生き方を変えるのは容易ではない。だが、自分を含め多くの人々を幸せにすることを思えば、難しいことではない。まずは、今の習慣を変えることから始めることだ。たとえば、‘早起き’や‘街の掃除’をぜひお勧めしたい。人生や経営に向き合う姿勢から変えるのだ。私の経験上、これが一番効果的であった。但し、即効性はないので、どこまでもやり続けねばならない。大切なことは、‘確かな目標’と‘感謝’、‘やさしさ’を持っていることだ。これこそが、より良き人生、良き経営のための基本中の基本だと確信している。

宗次德二

宗次德二

宗次德二むねつぐとくじ

カレーハウス CoCo壱番屋 創業者

生後まもなく孤児院に預けられ、3歳で「宗次」姓の養父母に引き取られる。養父のギャンブル狂によって各地を転々とし、養父母の離婚の後は養父と2人、生活保護を受ける極貧の少年時代を過ごす。 自ら学費を稼ぎ…

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