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2017年11月01日

会社の歴史

 NHKの朝ドラ「わろてんか」は、吉本興業の創業者の吉本せいを
モデルにしているらしい。ということで、あるフリーペーパーから、
吉本せいについての原稿を依頼された。

 もちろん、彼女のことは知っている。けれど、吉本興業に入社した
22歳のわたしにとって創業者なんて遠い存在。
「だんなが芸人が好きで寄席にばっかり行ってたから、『それなら
わたしが劇場をつくってあげる』」
と、寄席小屋を始めたのが吉本興業のきっかけだったくらいしか
知らなかった。

 もっとも、吉本せいを題材にしたドラマや芝居などもあったので、
読んだり、見たりしていたけれど、
「そうなんだ」
「パワフルな女性なんだ」
くらいにしか思っていなかった。
 でも、自分が原稿を書くとなると違う。いろいろな本や資料を
読んでみなければならない。そして、調べれば調べるほど、彼女の
人生だけでなく、吉本興業という会社の歴史や変化なども非常に
興味深い。

 夫がただの芸人好きなだけでないこと。芸人の目利きや世の中が
何を欲しがっているか見極めることができた人だったことが分かった。
そんな夫を好きにさせながらうまくマネジメントしたのがせい。
 テレビの無い時代、お風呂上りに寄席小屋に行くのが庶民の楽しみ
だった。「落語よりもっと気楽に楽しめるものをしたほうがいい」と
色物と呼ばれる漫才や安来節などを取り入れて、夫婦の経営する寄席小屋を
人気小屋にして行く。一方で一流と言われる小屋も買収。
 それだけでなく、寄席経営しながら8人もの子供を出産。ただ、時代が
時代だけに成人したのは4人。それだけでも、「すごい人生」だと
思ってしまう。

 また、夫が若くして亡くなった後も弟たちと会社を盛り上げて行った。
その中で太平洋戦争があって、大阪空襲に遭ったりと、波乱万丈な人生。
そんな彼女が作り上げたお笑い帝国が吉本興業で縁があって、わたしは
そこで新入社員時代を過ごした。

 研修などで、若手に、
「創業者のことを語れる?」
という質問をする。意外にもほとんど語れるメンバーがいない。わたしも
そうだった。でも、創業者と会社の歴史を勉強してみると、今の自分が
奇跡に思えてくる。運命を感じさせてくれる。
 この機会に自分の会社の創業者や歴史に興味を持ってみるとおもしろいかも。
何よりも、そんなことを学んだ時、ここにいる自分の「縁」に感謝できた
わたしがいる。

大谷由里子

大谷由里子

大谷由里子おおたにゆりこ

(有)志縁塾 代表取締役

故横山やすしさんのマネージャーを務め、宮川大助・花子、若井こずえ・みどりなどを売りだし、一時は“伝説のマネージャー”として騒がれた大谷由里子氏。その後もベンチャー企業の社長やフリーのプロデューサーとし…

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