子どもに対してネット教育を行う際に大切なのは、「子ども自身に考えさせる」ことです。「こういう場合、あなたはどうするか?」、「もしこんなトラブルが起きたら、あなたはどう対応するか?」など具体的な設定をして、子どもたちに自分の力で考えてもらうのです。
たとえば、「アイドルのファンサイトで知り合い、仲良くなった同性の人から『会いたい』と言われた」という設定をしてみます。この設定に対し、子どもたちから意見を募ると、さまざまな声が上がります。「危ないから会わないほうがいい」という生徒もいれば、「ファン同士だし、相手のことを調べて大丈夫そうなら会ってもいいと思う」という生徒もいます。そこで今度は後者の意見、つまり「相手のことを調べる」、「大丈夫そうなら会う」という点について、また意見を募ります。どんなふうに調べたらいいのか。調べた情報をどう判断するか。これらについて意見交換がはじまり、子どもたちは活発に発言してくれます。「相手の名前で検索してみる」、「なりすましの場合があるから、写真を送ってもらう」、「他人の写真を送ってくるかもしれないから、信用できない」、「ビデオ通話で顔を見て話せば、相手のことがよくわかる」など。こんなふうに意見交換を重ねて生徒たちが導き出した結論は、「仲良くなった人でも、まずは相手のことを調べてみる」というものでした。
ここでポイントになるのが、「実際に調べる方法がある」という点です。会うか、会わないかをその場で判断せずに、一旦保留する。まずは相手の情報を調べたり、「会う必要性」を考えたりして、それからどうするかを決めればいいわけです。SNS上の交流のように、「即レス」的な感覚に慣れている子どもにとって、「保留する」という視点はなかなか持てません。その場のノリで反応するのではなく、まずは調べてみる、自分の考えをまとめてみる、こうした方法に気づくことが大切なのです。
「ファンサイトで仲良くなった人と会うかどうか」という設定に限りません。ネットショッピンクやフリマアプリで買い物をする。サイトの会員登録のために個人情報を提供する。友達からまわってきた噂話を別の人に転送する。おもしろい写真や動画を投稿する。それぞれの設定は違っても、「こういう場合、私はどうするか?」を考えるための方法は同じ。前述したように、まずは調べたり、自分の考えをまとめたりして、それから「どうするか」を決めればいいのです。
ときには、調べてみてもわからないことや、自分だけでは判断できないこともあるでしょう。そんな場合はどうするか? この点もまた自分で考えてみます。ある生徒は「親に相談してみる」と言います。それに対して別の生徒は、「親に聞いてもわからないと思う」と反対意見を言いました。ではどういう方法があるか、とあらためて意見交換をしてもらいます。なんだかずっと意見交換ばかりしているように思われるかもしれませんが、これが本当の意味での「実践的なネット教育」ではないでしょうか。実際の当事者である子どもが、自分で考え、判断し、少しずつ答えを導き出す。その過程で、今まで気づかなかったことに気づいたり、別の視点を持てたりすることが重要なのです。
私たちおとなだって、誰かに道案内されて通った道の景色は忘れても、自分で探しながら通った道はしっかり記憶に残ります。同じように、一方的に押し付けるのではなく、子ども自身に考えさせるネット教育こそが、真に彼らの役に立つように思うのです。
石川結貴いしかわゆうき
ジャーナリスト
家族・教育問題、青少年のインターネット利用、児童虐待などをテーマに取材。豊富な取材実績と現場感覚をもとに、多数の話題作を発表している。 出版のみならず、専門家コメンテーターとしてのテレビ出演、全国各…
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