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2011年01月25日

経営者の一番の趣味は仕事

 今から20数年前、まだ100店舗にも満たない店舗数の頃、ある雑誌の取材を受けた。その折、「趣味は何ですか」という質問をされたのだが、私は間髪を入れず「仕事です!経営をしていることが一番楽しいのです」と、至極当たり前のように答えた。だがその時の記者さんに、そんなはずはないと言わんばかりに「いくら社長であっても、経営以外の趣味が有るはずですから、教えてください」と何度も尋ねられた。私は答えに困ったあげく、冗談交じりに「それならば…私の趣味は嫁さん(妻)にしておいてください」と答えたのだが、以来、何度かその時の答えが活字となった。

 私にとっては、経営という仕事以外に、自らの物欲や他の欲求を満たすような楽しみや道楽は何一つ無かった。正に経営に我が身を捧げ続け、脇目をふることなく一途であった。経営における目標が年を追って大きくなっていくことが、何よりも楽しく、また、家族・社員・お取引先様等、実に多くの人々の期待に応えることこそが、経営者である私にとっての一番の喜びであった。だからこそ休日が年10数日であっても、早朝から深夜に至るまでの仕事であっても、楽しいと思えたのだ。

 世の多くの経営者を見ていると、年間52日(週一日)以上の休みを取り、実に多彩な趣味を持っている。まるで、自らの欲求を満たすために経営者をしているのではないかと思える。多くがこうした考え方で有るからこそ、記者さんのような質問となるのだろう。

 私の目から見れば、そうした社長は実にのん気に経営をしており、費やす時間もお金も、もったいないと思えてならないのだ。確かに生き方や人生そのもの、経営における価値観を他人がとやかく言えるものではないが、もし今、経営状態が厳しいのであれば、創業精神を呼び起こし、明確な目標を立て、仕事・経営に一途だったあの頃に戻ったらどうだろう。当時は自転車操業だったから、仕方なく頑張っていただけなのだろうか。いや、決してそうでは無いはずだ。経営者だけの欲求を満たしていることなど、増収増益の右肩上がり経営から見れば、どうでも良いことばかりである。もし経営者が趣味として持つことを許されるものがあるとしたら、家族が喜んでくれること、社員が喜んでくれることだけにすべきだと思う。

 長引く景気低迷の中、他人から社長の趣味はと聞かれ、自慢げに私の趣味は「ゴルフ」「マリンスポーツ」「人脈作り」などと言っている場合ではない。明日からでも将来に向かい経営を続けたいのなら、少なくとも社長の二大趣味の一つが仕事、百歩譲って三大趣味の一つが仕事として欲しい。出来ることならば、「私の唯一の趣味は仕事です。会社経営です」と言えるほど経営一途であることが一番だと、私は確信している。

宗次徳二

宗次徳二

宗次徳二むねつぐとくじ

カレーハウス CoCo壱番屋 創業者

生後まもなく孤児院に預けられ、3歳で「宗次」姓の養父母に引き取られる。養父のギャンブル狂によって各地を転々とし、養父母の離婚の後は養父と2人、生活保護を受ける極貧の少年時代を過ごす。 自ら学費を稼ぎ…

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