子どもたちの中には、髪の毛をとかしたり顔を洗ったりしないまま学校に来る子もいます。髪の毛がぼさぼさで、口の周りには朝食のソース類がついたままになっている子もいます。少しくらいなら子どもらしくてかわいいということにもなるかもしれませんが、度を超えていると心配になります。というのも、人間関係をうまく作っていくためには、身だしなみへの適度な配慮は不可欠だからです。身だしなみへの無関心は、いじめられやすい要素の1つにさえなり得るのです。
私は、子育て中の家庭においては、玄関に姿見を置くことをおすすめします。それも、できるだけ大きなものがいいと思います。そして、光の当たり具合にも気をつけて、とくに顔の細部がうまく見られるようにすることも大事です。というのも、やはり何と言っても顔は一番大事だからです。玄関に姿見があれば、家を出るときに毎回自分の顔と全身を見ることができます。それは、他人から自分がどう見られるかということの確認なのです。たとえ子どもでも、髪の毛のぼさぼさや口の周りのソースを目にすれば、少しは気を付けるようになります。服のボタンが外れたり襟が折れ曲がったりしていれば直します。無頓着なままで学校に来る子たちは、そもそも自分のそういう顔や姿を自分の目で見ていないのです。だから、平気なのです。毎回目にするようになれば、必ず意識するようになります。
また、鏡をよく見ていると表情が豊かになるという効果もあります。人間は、鏡を見ていると自分のいろいろな表情を試してみたくなるものです。とくに、笑顔を作って確認してみたくなるのです。私は、これは人間の本能だと思います。人間関係においては、顔のもともとの作りよりも表情の豊かさの方が影響力が大きいと言われていますので、玄関の姿見で毎回自分の顔を見ることは人間関係力アップにも欠かせないのです。
成長期の十何年もの間、玄関の姿見で毎回それとなく自分の顔や姿を意識する機会を持つか、それともそういうことはまったくなく過ごすのか、その差は大きいはずです。後者は、他人の目から自分がどう見えるかという意識をまったく持たずに過ごすということです。もちろん、その子の後天的な容姿にも大きな影響が出ます。
親野智可等おやのちから
教育評論家
教育評論家。本名、杉山桂一。長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。『子育て365日』『反抗期まるごと解決BOOK』などベストセラー多数。人気…
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