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コラム 教育

2011年02月10日

“エンコー”だけじゃない

 子どもたちのプロフを観察することがある。近所に住んでいて、中学生で、ギャルっぽい女の子はいないかな。そう思って携帯電話を操れば、瞬時に検索結果が現れる。

 画面に並ぶ素顔の写真には、女性の私から見ても「かわいい」と思える子がいる。プロフには日記も書き込めるので、その子が日々どんな暮らしを送っているのかが手に取るようにわかる。いちごヨーグルトが好きなんだ。へえ、お兄ちゃんとケンカしたのか……。会ったこともない彼女に、親近感を抱きつつある自分に気付く。

 プロフの中の女の子は、手のひらサイズのペットのようなものだ。第三者が好みの子どものプロフを毎日読むうちに勝手に好意を持ち、ストーカー行為に及ぶとしても、不思議ではないと思われる。

 実際、プロフを見た人からつきまとわれる被害は多発している。「学校の前で待ち伏せされた」「自宅の周辺をうろつかれた」といったケースだ。

 「リク写」という言葉も聞かれるようになった。「リクエスト写真メール」の略である。プロフやSNSで知り合った相手から、下着姿などの写真を携帯メールに添付して送るようリクエストされ、応じた代わりに金をもらう。一枚数百円から、内容次第で数千円にもなる。女子中高生の間では、手軽な「バイト」として人気だ。

 中3のA子は、ネット上で知り合った「仲介業者」を名乗る男に「下着姿の写真を高く売ってあげる」と言われ、携帯で自分を撮影して送った。「本物の中学生とわかれば、さらに高い値がつく」と促されたので、生徒手帳の写真も追加した。途端に男は「学校にバラされたくなかったら言うことを聞け」と豹変。A子はさすがに怖くなり、親と警察に届け出た。

 身近な人物から被害を受けることもある。高1のB子の携帯には、クラスメートの男子から毎晩十通以上のメールが届くようになった。「いま何してんの」など、たわいもない内容。気持ち悪いので無視すると「なんで無視してくんの」。

 次第にB子は、メールの着信音を聞くだけで怯えるようになった。「着信があるたびに本当に怖かった。あいつなんか死ねばいいと思った」。耐えられなくなってメールアドレスを変え、ようやく逃れた。

 男子が女子に「体を触らせて」などの卑猥なメールを送り付ける事例も発生している。携帯の普及に伴い、新手のスクール・セクハラが広がりつつある。

渡辺真由子

渡辺真由子

渡辺真由子わたなべまゆこ

メディアジャーナリスト

放送局報道記者として、いじめ自殺を取材したドキュメンタリー「少年調書」で日本民間放送連盟最優秀賞など受賞。その後カナダのメディア分析所に留学し、メディアリテラシーを研究。 ニュース記者としての長年の…

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