ご相談

講演依頼.com 新聞

コラム ビジネス

2011年03月25日

リーダーへの期待 ~東日本大震災で思い出した3つのこと・阪神大震災の経験より~

先日、東北地方を中心に未曾有の大地震と大津波が襲いました。亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に、大切な家族、友人、財産などを失われた方々や、なおも困窮や不便に苦しまれる方々にお見舞いを申し上げます。私は関西出身なので、連日の報道を見ながら、何度も阪神大震災を思い出しました。今回は、1995年の阪神大震災を振り返りながら、その時に感じたリーダーシップのあり方、リーダーに必要な3つのことについて、書いてみたいと思います。全国的に広がる被災地復興支援の動きのなかで、一助となれれば幸いです。

私は1995年当時、マンション分譲を行う会社の人事部員で、東京本社の勤務。神戸で早朝に大きな地震が起こったということは、朝のニュースで知っていましたが、それほどのこととは思わずいつも通りに出社しました。が、大変な事態になっていることが徐々に分り始め、100名近い社員がいる関西支社のサポートに、昼前には人事部長と一緒に新幹線に飛び乗り、結局4日間滞在しました。

被災地の支社における皆の最大の関心事は、支社長や幹部がどのような言動をとるかということでした。それぞれ何時頃に出社したか。自分のことはさておいて、メンバーの安否確認や状況把握、その対応にどれくらい心を砕いたか。これらによって、メンバーの幹部に対する評価がくっきりと分かれたのは非常に印象的でありました。

当然、幹部達も全員が被災し、被災状況はそれぞれなので「誰が早く来たか」といったことで評価するのは酷なのですが、実際にはその時の言動が後々のメンバー達との信頼関係を左右する結果となりました。切羽詰まった状況であればあるほど、リーダーには大きな期待と厳しい視線が集まり、その時の言動が組織からの信頼を天地ほども変えてしまう可能性がある。リーダーは、メンバーに期待され、視線を一身に浴びており、それに油断することなく応え続けなければならない。これが、一つ目です。

リーダーの本当の姿も、こういう時にはっきりと分ります。外部に対しては、分譲済み物件や管理物件の点検の手法や役割分担、不具合が起こっている物件に住む顧客に対する対応の方法と体制、内部的には、自宅が全壊してしまった社員のためにホテルを10室ほど確保したが、そこに宿泊してもらうのは家族だけか、親戚や知り合いも可とするか。1週間、出社せずボランティアに参加したいと言いはじめた社員にどう回答するか、その際の勤怠の取り扱いをどうするか。家に住めなくなった社員のその後の生活に対してどのような支援を行うか、など様々な問題にスピーディーに対応しなければなりません。

通常のルールや手続きが全く通じないこんなときに、視点・視野、価値観、覚悟、外部との人脈、社内他部署からの信頼関係といったもの、つまり、どのような人物なのかが丸見えになります。二つ目に感じたのは、組織運営のスキルや、ルールに則った管理なども大切かもしれないけれども、結局のところリーダーは、人としてどうか、どのような人物なのかが問われているのであるということでした。

無事でいることを人づてに連絡してきたまま、3日目まで状況が分らない課長が一人いました。困窮しているに違いないと、水などを持って、2時間ほどかけて自宅まで歩いて訪ねていったところ、住宅が軒並み倒れて悲惨な光景になっている通りの向こうに見えたのは、集まって盛り上がる二十数名の集団。輪の中心には、その課長。近づくと、それは酒屋さんの前で、子供やお年寄りも集まってすっかり宴会のような状態です。行われているのは「余震の震度当てクイズ」でした。

イメージしていた状況とのあまりのギャップに唖然とする私に向かって、自分の家も半壊状態になっているその課長は、「会社のことは、お前も東京から来ているのだから会社でしっかりやってくれ。俺は、この地域の人を元気にする。暗くなったらダメだ。」と語りました。賛否両論あると思いますが、一緒になって落ち込んだり、右往左往したりせず、皆を元気付けよう、勇気付けようとしている姿に私はいたく感動したのです。リーダーはメンバーを元気づけ、勇気付けなければならない存在であり、そのためにはリーダー自身が、元気で勇気ある人間でなければならない。これが三つ目に感じたことでありました。

この震災をきっかけにして、社会や経済や、私たち自身の考え方や振る舞いが変われるか。リーダーシップを取る者として、「救援・支援・復興」の次に私たちが考えなければならないのは、このことだと思います。一日でも早い被災地の復興を、心よりお祈りしております。

川口雅裕

川口雅裕

川口雅裕かわぐちまさひろ

NPO法人「老いの工学研究所」理事長(高齢期の暮らしの研究者)

皆様が貴重な時間を使って来られたことに感謝し、関西人らしい“芸人魂”を持ってお話しをしています。その結果、少しでも「楽しさ」や「気づき」をお持ち帰りいただけていることは、講師冥利につきると思います。ま…

  • facebook

講演・セミナーの
ご相談は無料です。

業界21年、実績3万件の中で蓄積してきた
講演会のノウハウを丁寧にご案内いたします。
趣旨・目的、聴講対象者、希望講師や
講師のイメージなど、
お決まりの範囲で構いませんので、
お気軽にご連絡ください。