今回のテーマは「自分が今どこにいるかを振り返る」です。4月から新年度が始まり気づけばあと2か月で年末。一年の初めに立てた目標が今どの割合で達成されつつあるのか、それを自己分析してみると明日からの自分のすべきことが明確に見えてくるのではないでしょうか。
さて振り返ってみるその前に、そもそもなぜ夢や目標を立てるのでしょうか?私はこう思います。単純に人が生きていく上で「とてもいいことだから」。
とにかく夢や目標の実現に向けてひたむきに走っているときというのは、たとえそれがどんなに体が疲労して精神的につらいことであっても、「目標に近づくのであれば、こんなことでいちいち傷ついている場合ではない。留まっている場合ではない。」と自分を奮い立たせて踏ん張れます。このとき潜在意識の中で実はとてつもない充実感(生きている実感や自分の存在意義)を感じていて、その充実感が気持ちのクッションとなって、たぶんいつも以上に苦痛に耐えられる強いメンタルを持つことができるのでしょう。
人は、本能的に、生きている実感や自分の存在意義を探していると思います。夢や目標を持つことでそれが探しやすい状態になるのではないでしょうか。人が人として生きていく上で何よりも不安になることは、自分が何をしたいのかわからず、やる気も起こらず、無気力・無感動で過ごすこと。人はこの世に自分の存在意義を確認できないと、不安に襲われ、その事実を受け入れたくないがために自分の心をより一層ガードする方向に動いてしまう、そんな気がします。
さて、私は常々講演で「夢を実現するためには、漠然としたイメージではなく、具体的に言葉にできるぐらいまで夢を細かくイメージすること。そしてそれができると実現の可能性は高くなる」という持論をお話させて頂いています。
それはなぜかというと、「漠然とこうなりたい」では夢の実現への着実な準備が出来ないからです。夢を具体化するためにはまず自分の本心に問いかける作業が必要で、「本当に実現したいものなのか?」という問いから始まり、実際に自分の心が決まれば、自ずとその準備が色々と必要な事に気づきます。いつまでに何をしなければ、それが実現できない、など。夢を決めて突然夢が叶うわけではありませんし、夢がかなうためのプロセスが必要なのです。「夢をいつまでに実現するか?」と時間の設定をすれば、次は、設定した時間から逆算して「直近でしていくべきこと」「直近でしていったことの積み重ねが3ヶ月後、6カ月後にどのレベルに達していたいか」を決めればいいのです。
そして、客観的な自己分析によって定期的に振り返ってその達成度をはかります。物事は全て思い通りにいくとは限りませんから、この振り返りをして自分のいる位置を確かめないといけない。時には最初に立てたやり方だけでなく軌道修正が必要なこともありますし、調整が必要な時もあります。この定期的に振り返るという作業が今回テーマにした「自分が今どこにいるかを振り返る」という事に繋がるのです。
最後の期限が来たときに、審判は外側から(他人や物質的なもの。スポーツでは成績)の評価と、自分がそのときどう達成感を持っているかによって、成功、失敗が結論付けされます。外側からの評価と自分の自己評価が一致していることは当然望ましいですが、必ずしも一致しなくてはならない訳ではありません。思えば、こんなようなことを選手時代に私はずっと繰り返していました。
断言するような表現になってしまいましたが、正直私が完璧にできていたという訳ではなく、むしろ若手の頃は闇雲でした。しかしシンクロという競技を始めて20年目を迎える25歳を超えたぐらいに「もしかしたらこういうことなのかな・・・」と、少しずつですが、夢や目標をもつことで得られる心の充実が、自分の毎日を活性化させるという感覚を持つことができたのです。それが皆さんのヒントになればと思い、講演でお話しさせて頂いております。
選手を引退した私の生活環境は随分変わりましたが、今、また新しい目標を追っているところです。簡単には進めず、「なんでこうなるの?」「なんでこんな思いをしなくちゃいけないの?」ということはたくさん起こります。でもそんな時は「こんなところでは終われない!まだまだ踏ん張れる!!」と考えるようにしています。そして迷った時、今、目標のどのあたりに自分がいるのかを振り返ってみてみることにしています。そうすると「もっとスピードを上げないと期限に間に合わない」と、自分の心にアクセルがかかるのです。
今回のコラムが皆様の心に少しでも触れるところがあれば嬉しいです。
ぜひとも共に頑張って参りましょう!
武田美保たけだみほ
アテネ五輪 シンクロナイズドスイミング 銀メダリスト
アテネ五輪で、立花美哉さんとのデュエットで銀メダルを獲得。また、2001年の世界選手権では金メダルを獲得し、世界の頂点に。オリンピック三大会連続出場し、5つのメダルを獲得。夏季五輪において日本女子歴代…
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