『今年の桜は、泣いています。いつ咲いたらよいのかと…。
そして今、許されたかのように美しい姿を見せてくれています。』
これは、報道部時代、一緒に取材に出かけ色々なことを教えてくださった、富士山を撮ったら日本一と言われる大先輩のカメラマンから頂いた手紙の一節です。
彼の岩手に住む友人のカメラマンも今回、津波による被害を受け、安否確認ができたのが、何と12日目だったそうです。
桜の花の華やかさ、優美さは、寒風に耐え、時には雪をいただきながら着々と力を蓄えてきた結果として、その美しさがあるように思います。不平を言わず、愚痴もこぼさず、大自然の摂理に身をゆだね、淡々と厳しさに耐えてきた日々があったことを私たちは、忘れてはならないように思います。その努力と忍耐がなければ、決して美しい花をひらき咲かせることはできなかったでしょう。
震災から一ヶ月がたちました。今だ続く余震に不安な日々を送られている被災者の方々が今なお多くいらっしゃいます。ご苦労の多い大変な生活の中でも、お互いを思い合い、助け合いながら頑張っていらっしゃる姿は、桜の花のように美しく、そして頭が下がります。
世界は今、日本に注目しています。一つは、日本は自力で再建できるのかどうか。二つ目は、原発の放射能漏れを封じ込めることができるのかどうか。今、世界は、かたずを飲んで見守っています。今こそ日本は、底力を発揮すべきときです。そんな中で、日本人の礼儀正しさは驚異の的です。パニックも起こさず、略奪も起こさず、整然と並んで生活している様子は、世界では、まずあり得ません。これは、日本人の民度の高さの証明です。
今回、私たちは、被災者の方々から、人として大切な多くのことを学ばせていただいたように思います。こんな素晴らしい人たちの傍で育つ子どもたちは、きっと強く逞しく、そして心優しい大人に育ってくれるのではないかと思います。子どもたちが、この地の大人たちから受け継いだ素晴らしい資質を不自由な生活の中でも、失われることがないように、私たちは、できる限りお役に立てるように努力することも必要に思います。
苦しい場に置かれても、人として大切な心を失わずに更に輝かせている人達もいれば、一方、被災地でない所では、助け合いの精神を忘れた大人がいるのも現実です。義援金詐欺、買占め、そして満員電車では、われ先にと人を押しのけて車内に入り込もうとする大人、大人のいじめ、最近は、聖域といわれている教育現場でも、心の貧しい者による陰湿ないじめがあるようです。
私は、そんな心の貧しい人達に、鏡を渡して、「これで、あなたの今の顔を覗いてごらんなさい」と言ってあげたくなります。気随気ままに生きる醜い自分の顔を見て、反省できる人は、まだ救われますが、それができない人は、大人として、人としてどんな立場にいる人でも失格だと思います。ましてや、教育現場の人間は、人を育てる仕事。心の貧しい者が、人を育てることはできません。子どもにとって学生にとって、失礼なことでもあります。
被災者の方々の心豊かな明を持つ人達と、後者の気随気ままに生きる暗の人を見ると、大人の心の明と暗の差は、どこから出てくるのだろうかと考えたくなります。これは、人の育ちに思えてなりません。物質的な豊かさの中での育ちのよさではなく、人としての心の優秀な人との間での育ちのよさによって違いが生まれてくるように思います。
限りない未来を持つ子供たちが、歳を重ねても歪んだ顔が鏡に映ることがないように、手を差し伸べていかなければなりません。それを怠ると、暗の心をもつ大人がもっと増えてしまうでしょう。
大人の心が癒され、温かくならなければ、子どもの心は癒されることはないのではないでしょうか。そのためには、大人自身が、それぞれの心を取り戻すこと、それが必要な気がします。
今回の震災で、改めて気づかされたことは、人と人の絆の大切さ、人の心の温もりではないでしょうか。人は一人では生きられません。
今、改めてみなさんの傍にいる人の大切さを感じ、そして絆を更に深めていって下さい。
みんなで、力を合わせて頑張っていきましょう。桜の花に負けないように。
春日美奈子かすがみなこ
フリージャーナリスト
國學院大學大学院法律研究科法律学専攻修士課程修了。報道畑25年の経験を生かし、少年院や教護院(現・児童自立支援施設)での実習を通し、常に現場の”今”や”生の声”を大切にして、少年問題に取り組んでいる。
教育|人気記事 TOP5
子どもは「ヨイショ」で伸びる!
清水克彦のコラム 「頭のいい子が育つ親の習慣」
『すっぱいブドウ効果』により、叱られたことはやる気がなくなる
親野智可等のコラム 「本当に子どもを伸ばす大人とは?」
勉強が苦手な子は「一点突破・全面展開」で
親野智可等のコラム 「本当に子どもを伸ばす大人とは?」
講演・セミナーの
ご相談は無料です。
業界21年、実績3万件の中で蓄積してきた
講演会のノウハウを丁寧にご案内いたします。
趣旨・目的、聴講対象者、希望講師や
講師のイメージなど、
お決まりの範囲で構いませんので、
お気軽にご連絡ください。