先日、知り合いの映画監督のロケーション・ハンティングに同行しました。監督のテーマは「原点回帰」で、活き活きとした色彩感のある森を探していました。
森を訪ねて回る旅の道中、一日ですべての季節に出会いました。そんな不思議な一日があるものです。ひとつの山に春夏秋冬とそれぞれの季節の色を見ることができました。
出発した時は、春爛漫、桜が咲き乱れていました。桜はピンク色ですが、伝統色名(和名)ではもっとニュアンスに富んだ様々な名前があります。
赤みのごく薄い赤紫「桜色」、「退紅(あらぞめ)」、赤みの鮮やかな赤紫である「中紅」。散りかけの桜は、紫がかった明るい灰赤である「桜鼠」など情緒溢れる色名になります。
山奥へ進むと、森は緑に染まり始めました。
芽吹いた葉は黄緑色ですが、別名は「萌黄色」です。竹林には「若竹色」が茂り、高いところに進むにつれ針葉樹の深い緑色「翡翠(そにどりのあお)」が山肌を覆います。
春色は明るい光にキラキラと輝くような高明度の気持ちが高まる色にあふれています。
そんな中、森の一部が突然、茶色に変わりました。伐採された森は静かに眠っているようにも思えました。
黄みの深い赤「紅柄色」の混じる大地に、「栗皮茶」や「黄土色」の茶みの強い黄色の落葉が今も広がっていました。
その間からは「山吹茶」が見えます。大地の茶色が反射して、赤みのさえた黄色である「山吹色」が、赤みのふかい黄色に見えたのでしょう。このように色は近くにある色と同調して見えることがあります。
秋色は茶みを含んだアースカラーと言われる色、深みのある落ち着いた色が多くあります。
山の頂に到着する頃には、雪が降っていました。(4月下旬に!です)驚きながらも、墨の五彩「淡」の鼠色である錫色(すずいろ)の空の下、しんしんと積もる美しい雪に魅了されました。
冬は、気温が下がり澄んだ空気が、すべての色をより鮮やかに見せてくれます。芽吹いた緑も雪の白とのコントラストで、更に冴えた、濃い色に見えました。
雲というフィルターを通した光の色、そして気温によって、こんなにも色が違って見えることを再確認しました。
やがて雪は雨に変わり、「浅緋(うすあけ)」の夕日射す山を降りる頃には、連なる山々は息をしているかのような靄に包まれていました。
靄は、まるで梅雨の頃のように「白鼠」別名「銀色(しろがねいろ)」の混ざる景色にあたりを変えていました。湿度で少し曇りながらも明るさのある色に染まった山に、穏やかで柔和な夏の初めの色を見ました。
四季のある日本に暮らす私達だからこそ見ることのできる色とその美しさ。祖先が見て、感じて、名づけた情緒ある色の名前の数々。
1日で、四季の光と色で変わる環境を体験できた貴重な時間になりました。
色への感慨深い思いとともに、自然と共存することの素晴らしさも教えられた気がします。
監督はこの森がお気に召したようで、次回作のロケーション現場に決定したことも、ご報告しておきます。
(参考文献 長崎盛輝著「日本の傳統色」)
榊原貴子さかきばらたかこ
ファッション&カラーコンサルタント
パーソナルカラ(=個人に合う色)に基づいて、メイクアップからファッションにいたるまで、個性に合わせたパーソナル・ブランディングを提案する。女子プロゴルファーの横峯さくらへのカラーコーディネーションおよ…
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