2016年7月1日、南アジア・バングラデシュの首都ダッカ・グルシャン地区にあるホーリー・アルチザン・ベーカリーで日本人がテロリストによる襲撃を受け殺害される事件が発生しました。実行犯は中東を拠点としていたイスラム国に関わった人物であり、バングラデシュを拠点とする武装組織ジャマトル・ムジャヒディーン・バングラデシュ(JMB)の構成員であることも確認されました。
中東地域ではイスラム国勢力が壊滅状態となり、過激派戦闘員が世界中に拡散。エジプト東部シナイ半島一帯を拠点とする武装組織シナイ州や北アフリカのリビアでテロ組織を煽る動きが確認されています。さらにこうしたテロの連鎖は、約2年前のダッカ日本人殺害テロ事件を始め、アジア一帯にも広がりを見せています。インドネシアのスラバヤでは、過激派ジャマー・アンシャルット・ダウラによるキリスト教会襲撃テロ事件が発生し、フィリピン南部ミンダナオ島マラウィーでは、武装組織アブ・サヤフやマウテグループとの戦闘が続き、大きなニュースとなりました。
これまでは、テロのネットワークは過激思想の人物や襲撃用の銃機器が国境をまたぐことで繋がっていくという構造が浸透し、見えやすいものでしたが、2014年イスラム国が建国宣言した頃から、インターネットを駆使する情報戦がテロの存在力を高める効果をあげるようになってきました。欧州で続くテロ事件を検証すると、完全武装したテロリストが銃を乱射するだけでなく、1人でトラックを運転し、人だかりに突っ込んでいくようなテロの小型化もひとつの特徴となってきています。襲撃規模が小さくとも、テロそのものを情報として世界に配信し、テロリスト自身の存在と破壊力をアピールできれば、その実行犯はテロを完遂したことになります。テロリストが情報を管理していく時代に入り込んできたと言えるのかもしれません。
また、どれほどスピーディーに襲撃効果をあげることができるのか。まるでビジネスマンが向き合う指向性にテロリストが乗ってきている傾向が見て取れます。これは過激派組織内での世代交代が起こっている現れと言えるのかもしれません。ニュースで耳にするテロ事件は遠い国のできごとではなくなってきています。危機管理に目を向けること、情報に思いを向けておくことが必要だと誰もが、問われていると痛感しています。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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