アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領は、イスラム組織タリバーンとの対話路線を交渉の主軸に置いてきています。武力による徹底攻撃は報復の連鎖を引き起こし、治安の悪化、さらには、民間人の犠牲者が後を絶たず、内戦状態を引き起こしてきました。テロリストに交渉の余地はあるのか。アフガニスタン政府は対テロ政策への葛藤を抱きながらもアフガニスタン議会にタリバーン側の一定議席数を用意。交渉窓口として議会という公式の場をイスラム組織に提供するメッセージを投げかけました。過激派によるテロ攻撃で犠牲となった家族や関係者からは理屈抜きの武力制圧を求める声が多いことも事実でありますが、ガニ大統領の交渉という選択が吉と出るか凶と出るか国内外の注目を集めています。
アフガニスタンに限らず、世界中には同じような武力闘争に立たされる国々が多数存在します。そして現実に武力ではなく融和路線によってテロ交渉をまとめることに成功した国が存在します。その国は南米大陸のコロンビア。約半世紀続いた左翼ゲリラ・コロンビア革命軍との内戦を対話路線によって終結させたサントス大統領の手腕は世界の注目を浴び、ノーベル平和賞を受賞するまでに至りました。武力ではなく、交渉によって戦闘を一時的でも終結させたことは世界情勢に光を灯しました。もちろんコロンビア国内では依然、和平調停の賛否は別れる現状が続いていますが、その実績は対テロ政策としての大きな自信につながりました。それぞれの国が立たされる民族や宗教問題、貧困や教育格差など混乱の背景は複雑に絡み合っています。なので、必ずしも同じ和平への方程式がどの国にもうまく当てはまるという保障はありません。
それ以上に注目される動きは、テロリスト側内部にも融和路線である対話や交渉を求める声が存在していることです。アフガニスタンでは先月のイスラム教断食月ラマダン明けの数日間はタリバーン側が一時的に休戦協定を結ぶ姿勢を提示しました。イスラム過激思想にも本来のイスラム教が持つ寛容や融和の精神が見え隠れしています。テロ内部で派閥による硬軟の動きが活発化しており、テロリストの世代交代の波が押し寄せている時期でもあります。過激派組織が変革の時を迎え、テロリスト自身も変化していく。この認識がアフガニスタンを変える原動力になるのかもしれません。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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