前回のコラムで、“アンダーマイニング現象”など、褒めることの難しさ、についてご紹介しました。では、褒めない方がよいのか、というとそんなことはありません。“褒める”、という行為は、暖かな人間関係を築く上で必要です。しかし、“褒める“タイミングがかなり重要となるのです。今回のコラムではそのことについてお伝えします。
褒めるタイミングは、何といってもその本人が本当にやった!と達成感を持っている状態であることが重要です。コツコツと頑張ってやってきたことが実ったタイミングであればなおのことよし、です。例えば、毎日トレーニングを積み重ねて、フルマラソンを完走した、とか、長い間提案を重ねて、少しづつ信頼を積み上げてきたクライアントから発注がきた、とかそんなタイミングです。本人も、よしやった!と思っている時に、すかさずよくやったね、頑張ったね、と言ってあげてほしいのです。褒める、というよりは一緒に喜び合う、という感覚でしょうか。でもこのタイミングは、実は簡単なようで大変難しいものです。例に挙げたようなわかりやすい、入試や就職が決定するなど大きなライフイベントの場合以外の日々の生活ではなかなか、相手がどこで達成感を感じているかわかりにくいものです。
例えばテストでお子さんが、80点を取って帰ってきた時、どう声をかけますか?凄く苦手な教科でこれまでどんなに頑張っても20~30点しか取れず、色々と勉強の仕方など工夫して、やっと取れた80点なら、本人はやっと取れた!やったぞ、と思っているかもしれません。そんな時は大いに褒めて一緒に喜んであげてほしいです。間違っても「80点くらいで有頂天にならないで、100点目指してね」なんて言わないでくださいね。すっかりやる気を失ってしまうことにもなりかねません。この場合、80点をいっしょに喜び合うことで、本人は自主的に、やった、もっとできる!次は100点を目指そう、という意欲につながっていきます。もっと、もっと、という次のステップは本人に任せてこそ、生まれてくるものなのです。
逆に95点でトップの成績だったとしても、本人は100点取れたとこでミスしちゃったな、悔しいな、と思っているのだったら、褒めても何も、相手の心には届かないものです。だからこそ、相手の状況を良く知って理解しておくことが大切で、良いタイミングで喜び合うことができれば、信頼感も相手のモチベーションも深めることができます。
また、一緒に達成感を感じる体験をチームや家族ですることができればより効果的です。例えば難しいプロジェクトにチームでトライする、家族で山登りをする、などです。一緒に目標を決めて、苦労し、頑張った末に達成することができたら、大いに自分も周りも褒め、喜び合って、やったー!という感動を共有して頂きたいと思います。
褒めるという行為は、感動の共有につながって始めて、相手に伝わる行為になるのではと思います。そして達成した時の景色を一緒に味わって、きれいだね、すごいね、と感動を共有し、深める体験を沢山して頂きたいと思います。そんな時、くれぐれも、今携帯見てるから後でね、とはおっしゃらないように。タイミングが命ですよ!
渡邊洋子わたなべようこ
公認心理師
大学卒業後、株式会社博報堂に入社し、ラジオ局、新聞局で勤務。ラジオ局ではFM局の番組のスポンサー業務を、新聞局では読売新聞担当として新聞広告業務に携わる。その後出産のため退職し、専業主婦を経験。200…
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