最近ある方と会話をして、どうしても気になる言葉がありました。それは「この頃の子供たちは我慢がきかない」というもの。なぜ気になったのかと言いますと、この言葉を聞いたのが一度だけではなかったからなのです。同時期に3回、同じ表現を耳にしました。
想像するに、例えば学校などで単調な作業に取り組んでいるときに、作業に飽きてしまって集中力を欠き始めるその時間が短くなってきていること。あるいは、「できない」と言って最初から手をつけないこと。はなからやる気を出さないこと。などでしょうか。
もちろんそれは少数派で、物事に一生懸命取り組んで達成感を得ようと頑張る子供達の方が多いと思います。しかし、「その少数派だった子供の割合が変動しているのでは?」と大人たちは感じ始めているのでしょう。このように、私は日常的に子供についての話題が取り上げられるのはとてもいい傾向だと思うのです。「我慢がきかない」と評するなら、その問題意識が薄れないこの<今>の間に、大人一人一人が自分の言葉の選び方、行動、生き方そのものについて見つめ直す最高の機会なのではないかと思います。なぜなら、「子供は社会を映す鏡」だから。
結局のところ、私自身も含めて、その人が大人になりきれていなくても、ある程度の年齢がくれば<大人>として生きなければいけないという義務が出てきます。この義務が果たせなければ、子供はその通りに、まさに大人の取った行動を鏡に映すように成長していくような気がします。
大人が「まぁいいよ。できないことは無理にしなくてもいいよ。」と言えば、そうしてあきらめてもいいと子供は理解するし、「今はできなくても、まず今日できることを考えてやってごらん。それを少しずつ積み重ねたらいつの間にかできるようになっているよ。」と言えば、子供はそう理解する。ときには潔く退くことも選択肢の一つとして語りかけることも必要になるかもしれません。全てを「ああしなさい。こうしなさい。」と指示するのではなく、子供がその経過に何を感じ取ったかを察知して導いていく…大人って大変です。
そしてその大変さに輪をかけて子供の視線はシビアです。言葉に行動が伴っていないと「そっちだってできてないじゃないか」ということになりますから。つまり、全ての大人がもう一度襟を正して、今の自分を見つめ、やる気をリセットさせ、目標を立て、それを全うしていくことを実行しなければいけない。
そして私はこうも思います。何かを叶えるためには継続が必要なこと、壁があれば乗り越える方法を考え工夫する創造力が必要なこと、子供のあなた達を見つめているよという意思表示をすること、それを示すコミュニケーションを多くとること、「一生懸命頑張るとこんなにも生きている実感が湧くんだよ」と言えるように、まずは大人である自分が生きている実感を得ること、が先決だと思います。
項目に挙げたことを一つずつ取り組むだけで、それはそれはパワーがいることだと思いますが、きっとその方が人生楽しいはず。その姿を見て子供たちが次代を担っていくのですから、やり甲斐、いやがうえにも出ますよね。自分たちの生きる姿勢をしっかり受け継いだ子供たちが育っていく姿を見て、愛情も責任感もぐっと湧きますよね。
かくいう私も、現在「頑張る」こと「あきらめない」ことについて再構築している真っ最中です。競技をしてきた21年間の経験を、引退後からこれからずっと生きていく社会でどのように生かしていくかを置き換える作業をしています。その過程でこんなことに気づきました。「スポーツは目標をわかりやすく持つことができる」ということです。例えどんなに辛い時期であっても、「オリンピックで…世界水泳で…こんな演技をして、自分の想像を超える達成感を得たい」と目標が明確であれば、それが人間の強みになることを知りました。それを志半ばであきらめることの後の喪失感の方が恐ろしいと感じたからです。それが嫌だから、どうにかやりようを探し続けられたのです。
セカンドライフでは当然そのままそっくり当てはまる訳もなく、新しい経験を繰り返し、試行錯誤を繰り返しながら進んでいます。いえ、もしかしたら止っている時期もあります。が、子供たちにはその生きていく強みになることをもっと伝えていきたい。そんな風に思っています。だから私も一個とは言わず、セカンドライフでは2個も3個も新しい形の「人間の強み」になることを知っていきたいと考えています。
皆さん。共に、映される鏡には見栄えよく映してもらえるよう頑張っていきましょう!
武田美保たけだみほ
アテネ五輪 シンクロナイズドスイミング 銀メダリスト
アテネ五輪で、立花美哉さんとのデュエットで銀メダルを獲得。また、2001年の世界選手権では金メダルを獲得し、世界の頂点に。オリンピック三大会連続出場し、5つのメダルを獲得。夏季五輪において日本女子歴代…
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