ここ2-3年のIT業界の重要なキーワードと言えば、デジタルトランスフォーメーション(DX)でしょう。しかし、言葉の認知度の向上とは裏腹に、日本企業のDXへの取り組みの遅れが懸念されています。経産省は2018年に「2025年の崖」というレポートを発表し、この状況に強い懸念を示しました。DXへの取り組みの遅れは、将来大きな問題を引き起こす恐れがあるとされています。(2025年の崖については、このコラムで今後取り上げて行きます)
これを受けて、多くの企業がDXへの取り組みを始めました。しかし、現在は多くの企業や人がさまざまな立場・さまざまな思惑からDXの話をし出したため、DXに取り組もうとしている企業の側には混乱も見られます。こういった、「なんとなく格好良いので皆が使っているけれども、実は定義が不明確」という言葉を「バズワード」と言いますが、DXはまさに「明確な定義が無いままに使われている」状態と言って良いでしょう。この後うまく進めば、いろいろな意見・解釈が出尽くした後にひとつの定義に収斂していく、ということになります。
「DXに取り組みたいが、どこから手を付けたら良いのかわかりにくい」という人がいるのは、これが原因と思われます。媒体や人によって言うことが違うのですから、わからなくなって当然でしょう。
私は、業務のデジタル化、DXには3つの段階があると考えています。第1段階は「既存の業務をコンピュータで効率化する」段階、第2段階が「クラウドやスマホなどの先進技術を使って既存のコンピュータシステムを改善してより効率化し、使いやすくする」段階、そして第3段階が「最先端のデジタル技術を使って既存の業務プロセスや組織を根本から見直し、変革する」段階です。今のDXの議論には第2段階と第3段階の話が混在しており、中には第1段階に入りそうな話もあるなど、これがDXに関する混乱を招いているのではないでしょうか。
多くの企業では、会計処理や顧客管理をPCで行う、生産管理や在庫管理のコンピュータシステムを導入する、といったことは昔から行われています。これは既存の業務をコンピュータ化して高速化・効率化し、正確さも向上させる効果があり、第1段階ということができます。
私は、IT業界の方々にお話をするときには、第3段階を前提として話をしますが、一般の企業の皆様がDXについて考える場合、今は第2段階~第3段階の少し広い意味で捉えても良いと思っています。多くの企業は未だに第1段階に留まっており、いきなり第3段階を目指すよりは、順を追ってシステムを高度化させていく方が良い場合もあるからです。
次回は、実例を挙げて各段階の違いについて考えて見ましょう。
大越章司おおこししょうじ
株式会社アプライド・マーケティング 代表取締役
外資系/国産、ハードウェア/ソフトウェアと、幅広い業種/技術分野で営業/マーケティングを経験。現在は独立してIT企業のマーケティングをお手伝いしています。 様々な業種/技術を経験しているため、IT技…
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