仕事柄、企業の人事の責任者や担当者の方と話す機会が非常に多いのですが、自社の組織や人材の状況などについてお伺いすると、おおむね次の3つのタイプに分かれます。
1つ目のタイプは、非常に悲観的、否定的な方。
中間管理職層が弱いとか、営業力がないとか、目標達成意欲が低い、といった具合に自社の人材の状況を嘆く。あるいは、コミュニケーションが不足している、閉塞感が漂ってセクショナリズムがひどい、現場から意見や提案が上がって来ない、などと言って、組織の状況を悲観しているような状態です。
経営者や人事部はちゃんと考えているのに、それを実行できる人材が現場にいない、人材のレベルが低いという考えなのでしょう。人材の弱みや組織のうまくいっていない部分に焦点が当たっており、頭の中は、やらなければならない課題が山積している状態なのだと思います。
2つ目のタイプは、楽観的で強気な見方をしている方。
能力が高い人間が揃っている、若手が育ってきている、定着率がいい、経営者の方針に皆が納得している、議論が活発で現場に活気がある、といった現場の捉え方で、人材や組織についてはさほど問題を感じていないような例です。
長所やよい部分に焦点が当たっているとも言えるでしょうが、ひょっとすると、業績が順調なので、全てがうまくいっているように感じられるだけかもしれません。はたまた、組織や人材を否定するような態度は経営者批判につながると考え、そんなことはたとえ思ったとして言えない、ということもありえます。
3つ目は、冷静に客観的に見ている方。
現状の人材や組織の状況を、これまでの企業の歴史や人事施策、事業環境などから捉え、良い点も良くない点も、そうなっている理由を仮説として持っているような方です。
従業員に対して批判的に考える面もあれば、経営が行ってきた策に対しても批判的に考え、失敗は失敗と言える面も持っている。逆に、従業員に期待し、気持ちを理解し、支援することもあれば、経営者を盛り立て、様々な企画や改善策を提案していくことにも積極的である。つまり、どちらかに偏って立つことはなく、従業員にも経営にも、均等な距離感を持った人と言ってよいでしょう。
私の感じるところでは、人事の方のうち半数以上が、1つ目のタイプに該当するのではないでしょうか。景気が低迷し、多くの企業が業績不振となる中、様々な策を講じてもうまくいかない理由をどこかに求めるとき、経営や自分たち人事部はさておき、現場の人材レベルやマネジメントを悪者にする人が多いように見えます。
人事部は、経営管理の一分野を担っているという点で、つい経営の立場から現場の物足りなさを嘆くような姿勢になってしまいがちです。しかし一方で、大切な人材としての従業員を守り、育てるという役割も重要であり、人事部は当然ながら従業員の視点、立場で思考できる力も求められています。経営者の視点など、”上から目線”で従業員を否定、批判しているだけの人事部が増えていないだろうか。私が最近、とても気になっていることです。
川口雅裕かわぐちまさひろ
NPO法人「老いの工学研究所」理事長(高齢期の暮らしの研究者)
皆様が貴重な時間を使って来られたことに感謝し、関西人らしい“芸人魂”を持ってお話しをしています。その結果、少しでも「楽しさ」や「気づき」をお持ち帰りいただけていることは、講師冥利につきると思います。ま…
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