12月9日…皆さん、何の日かご存知ですか?そう、障害者の日です。法律に定められてもいた日なのです。お休みではないため、直接的に意識することが少ないかもしれません。この日は1975年の国連総会において障害者の権利に関する決議が採択された日なのです。
現在では12月3日から9日までの1週間を障害者週間として国民が障害者の福祉についての理解を深めたり、障害者自身があらゆる分野の活動に積極的に参加する意欲を高めたりすることを目的として国や地方自治体などが様々な活動を行っています。
中でも障害者が講師となっての講演会が多く行われてもいます。
障害者スポーツは特別なの?
障害に応じてルールを変えたり道具を工夫したりして実施しているものが障害者スポーツの特徴です。このような場合、障害ゆえに特別なのだと思われる方が多いのではないでしょうか。そもそもスポーツにおいてルールは大切です。しかし、大人と子どもとが同じスポーツをするといっても、たとえばバレーボールの場合、年齢や性別によってネットの高さが違っていたり、ボールの大きさが違っていたりします。このことも1つの工夫であり、子どもたちに応じた配慮と言えるのではないでしょうか。
そのようなことから障害者スポーツのことを「アダプテッドスポーツ」と呼ぶようにもなってきました。「アダプテッド」とは工夫された、応用されたという意味です。そもそもスポーツというものに改めて障害者スポーツというカテゴリーを設ける必要がないことに気付いていただけるのではないでしょうか。歴史的な背景から分けられてきたという現実があります。しかし、スポーツ基本法が2011年に50年ぶりに改定されスポーツ権が障害者にもあることを明記したことは大いに評価できます。そして、これから具体的な場面での変化を見届けていかなければならないと感じています。
スポーツの力
スポーツには自らの体力向上や勝利することなどに価値が見いだされがちですが、ぼくはスポーツを続けていることでいろいろな方々と出会うことができました。
ぼくは水泳選手としてまだ目が見えているころ、1988年のソウルオリンピックを見ていました。ぼくは背泳ぎの選手だったこともあり、鈴木大地選手のバサロスタートによる金メダルに感動したことを鮮明に記憶しています。その憧れの大地さんにお会いする機会もありました。また、オリンピック・パラリンピックの招致活動を通じて、多くのオリンピアンとも出会うことができました。
このような有名選手との出会いだけではありません。近所のプールで泳いでいたら、教え子との再会があったり、様々な年齢の方々と水泳という共通の趣味の仲間としての出会いがあります。水着でプールにいるとき、企業の社長さんやお医者さんだとかメダリストだというものは関係なく水泳が好きな者同士という関係になれることもスポーツがもつ力ではないでしょうか。
さらに東日本大震災による被災地支援としてアスリートが率先して寄付金を集めたり、被災した地域を訪問しスポーツ教室や講演会などを開催するなど、子どもたちを始めとして多くの方々に前向きになるきっかけを提供できているのかもしれません。なでしこジャパンの女子サッカーワールドカップでの初優勝にはぼくも感動しました。「やればできる!」というメッセージを言葉でなく伝えることができるスポーツは復興においても大きな力となることでしょう。
ぼくはスポーツほどフェアプレー精神など心の財産を多く残せるものはないと考えています。それにも関わらず、領分の狭い議論をよく耳にします。障害者スポーツと健常者のスポーツは違うであるとか、オリンピックとパラリンピックとは違うという声です。
スポーツ本来の魅力に着目したとき、障害の有無、ルールの違いは関係あるのでしょうか。それぞれの肉体、精神、知力の限界を振り絞り自らの可能性の限界に挑戦することが尊いのではないでしょうか。ぼくはそう思っています。
ルールが分からなければおもしろくない…、見る側の意見としてはそういう声もあるかもしれません。ルール以上に障害者スポーツには障害の程度に応じたクラスというものがあり、このクラスが分からないことにより一般の方々の理解を難しくしているのだと感じています。
そもそも、一般のスポーツであってもルールが複雑だとか、直接目にする機械が少ないなどマイナー競技は障害者スポーツと同じように苦しい境遇にあるものもあります。多様なスポーツの存在に目を向けてもらえるようマスコミの方々と協力して広報していきたいと思います。
ぼくはスポーツを通じて子どもたちを始めとして多くの方々に「障害」について考える機会が増えていくよう取り組んでいきたいと思います。幸いなことに今年2012年はオリンピックイヤーでありパラリンピックが開催されるということです。ロンドンパラリンピックが8月29日から9月9日まで12日間開催されます。是非注目していただき心からの声援をお願いいたします。
さらに2020東京オリンピック・パラリンピック招致活動を通じて、パラリンピック競技、パラリンピアンを通じて障害について考える好機としていきたいと思います。我々パラリンピアンの参加により招致への機運を前回以上に高まるよう頑張っていきます。今から8年後の姿は自分のことでさえも想像できないという声を耳にします。「見えない」と思っていては永遠に見えてはきません。どのような未来にしたいのかを思い描くことにより、初めて「見えてくる」ものなのです。ぼくは視力は0で目はみえていませんが、8年後に東京でオリンピック・パラリンピックが開催され、大いに賑わう会場の様子が浮かんできます。そのような大会をぜひとも日本に招致したいのです。パラリンピックが開催されることで首都東京はインフラなどハード面だけでなく誰もが優しさに出逢えるはずなのです。ソフト面でのバリアフリーを進める絶好のチャンスとなります。ぼくはそういう社会になることを切望しています。
河合純一かわいじゅんいち
パラリンピック競泳 金メダリスト
生まれつき左目の視力が無く、少しだけ見えていた右目も15歳で完全に光を失いました。それまで見えていたものが全く見えなくなることは中学生の私には大きな衝撃でした。しかし、私には幼い頃からの二つの夢があり…
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