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2012年03月23日

変化の有無と人材育成の関係

学生時代、就職についてゼミの先生に相談した際、次のように言われたことをよく覚えています。「成長著しい会社か、非常に厳しい経営状態にある会社か、どちらかに行くのがいい。私の研究によれば、幹部になった人や高い職務能力を持っている人はたいてい、若い時に大きな変化を経験している。残念ながら窓際で終わる人は、若い時に変化を経験しなかった人達が多い。大切なのは、若い頃に、同じような仕事を繰り返していればよいような環境に身を置かないこと。安定企業に入ると、そういう危険がある。急成長しているにしても、厳しい経営状態にあるにしても、変化が経験できるだろう。」

マニュアルに沿って業務を行っている担当者と会話をしているとき、そのような手順・手続きになっている理由を、彼が全く理解していないことが判明した、という経験はないでしょうか。既に仕組みが出来上がっていて、それに則って仕事を繰り返していると、多くの人はそんな思考停止状態に陥ります。マニュアルや仕事の仕組みなど、基盤を作った人には、今やっていることに疑問を持ったり、改善点はないかと考えたりする習慣がありますが、出来合いの仕組みに乗っかって仕事を進めてきた人には、そのような思考が身についていません。

また、思いも寄らぬ事態に遭遇し、それを切り抜けたことがある人と、前例があって、決まった対応や手続きを踏み続けてきた人では、想像力・対応力・判断力においてかなりの差がつくはずです。厳しい局面に向き合うときのマインドにも、違いがあるでしょう。このような差を、年齢を重ねてからカバーするのは難しい。「若い時の苦労は、買ってでもせよ。」という言葉に近いように思いますが、その教授いわく、それは調査した結果からも明らかだというわけです。

ドラッカーに、このような言葉があります。
「優れた者ほど間違いは多い。それだけ新しいことを試みるからである。間違いをしたことのない者、それも大きな間違いをしたことのない者をリーダーの地位に就かせてはならない。間違いをしたことのない者は凡庸である。そのうえ、いかにして間違いを発見し、いかにしてそれを早く直すかを知らない。」

挑戦すれば、失敗や間違いを犯す。が、その経験は、将来リーダーとして欠かせない素養になる。一方、失敗や間違いを経験したことがない者は、鈍感で対応力にも欠けるので、リーダーたり得ないのだと言っています。今考えると、教授の「変化のある会社に行きなさい」というアドバイスも、「若いうちに、失敗や間違いを経験しなさい。(失敗や間違いを犯しやすい環境を選びなさい。)」という意味だったのだろうと思います。失敗や間違いは、決して悪いことばかりではない、というようにも理解できます。

果たして、今の企業、組織はどうでしょう。若い者が犯す失敗や間違いに対する姿勢は寛容か。失敗や間違いを犯すような変化が起こっているか。若い者にそのような機会が与えられているか。冷静に見てみれば、”成果主義”は失敗への恐れにつながり、”コンプライアンス”が間違いにつながる可能性をチェックし、抑え込み、さらに”プレイング・マネジャー”が若手の挑戦の機会を奪っている、のではないでしょうか。であるなら、「若手が育たない」という結果は当然なのかもしれません。

川口雅裕

川口雅裕

川口雅裕かわぐちまさひろ

NPO法人「老いの工学研究所」理事長(高齢期の暮らしの研究者)

皆様が貴重な時間を使って来られたことに感謝し、関西人らしい“芸人魂”を持ってお話しをしています。その結果、少しでも「楽しさ」や「気づき」をお持ち帰りいただけていることは、講師冥利につきると思います。ま…

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