男子サッカーがオリンピック出場を決めました。これで5大会連続です。実に20年にわたって、オリンピックの出場権を確保していることになります。
28年ぶりにオリンピック予選を勝ち抜いた1996年のチームで、私はコーチを担当していました。オリンピックにしろ、ワールドカップにしろ、当時の日本はなかなか予選を突破できない状況でした。我々コーチングスタッフの手元にも、「こうしたら勝てる」という確固たる材料はありませんでした。すべてが手探りでしたし、だからこそ細かなところまで突き詰めていきました。
現在は違います。過去4つのチームがオリンピックへ出場し、選手のみならずスタッフも様々な経験を積んできました。「どうやったら勝てるのか」を、それぞれの立場で考えられるようになっているのです。
私自身はコーチで2度、監督で1度、オリンピックに参加しました。その経験を踏まえて言うと、予選突破から本大会までの過ごし方はきわめて重要です。7月下旬の開幕まであと4か月ほどですが、ここからが密度の濃い時間になります。
大まかに整理すると、やることは3つあります。
まずは、誰を選ぶのか。予選を突破したチームのままで、世界と戦うことができるのか?対アジアから対世界へ戦略が変われば、必然的に選考基準も変わってきます。
ましてやオリンピックは、予選よりも少ない18人で戦わなければならない。少ない人数で様々な状況に対応するには、複数のポジションをこなせる選手が必要になってくるでしょう。チームとしての応用力を高めていかなければなりません。
表彰台を目ざすなら、オーバーエイジ枠の活用は欠かせません。メダルを獲ろうとするチームは、オーバーエイジを使ってフル代表に近い編成をしてきます。これがふたつ目のポイントです。
年齢制限に関係なく出場できる3人は、リーグ戦になぞれば外国人選手のようなものでしょう。チームのレベルを押し上げる存在です。どこのポジションに、誰を選ぶのか。オーバーエイジというピースをピッチ上のどこにハメ込むのかで、チームの可能性は大きく変わっていくでしょう。
3つ目はテストマッチです。
4年前の北京オリンピックの直前には、アルゼンチンと対戦しました。本大会で金メダルを獲得した強豪が来日したのは、地理的な要因があったからです。北京入りするまえのトレーニング場所として、時差が少なく気候も似た日本は最適だったのです。
今回はロンドンですから、日本に地理的なアドバンテージはありません。純粋な交渉力が問われます。
強豪とのマッチメイクを実現させるのはもちろんですが、相手側のメンバーにもリクエストをしたいところです。つまり、オーバーエイジかそれに相当する選手を入れてほしい、と。23歳以下のチーム同士で対戦しても、本大会へ向けたテストにはなりませんので。
私が指揮したアテネ五輪代表は、ヨーロッパや南米のフル代表と対戦をしました。言うまでもなく、実戦を想定したものでした。
良い相手が見つからなければ、日本代表に手を貸してもらうのもいいかもしれません。オーバーエイジをプラスしたU-23代表と、ザッケローニ監督率いる日本代表が真剣勝負をする――オリンピックへの強化はもちろん、ワールドカップ最終予選を戦う日本代表にも有意義な一戦になると思いますよ。
山本昌邦やまもとまさくに
NHKサッカー解説者
1995年のワールドユース日本代表コーチ就任以降10数年に渡って、日本代表の各世代の監督およびコーチを歴任し、名実ともに日本のサッカー界を牽引してきた山本氏。山本氏の指導のもと、成長をとげた選手達は軒…
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