20世紀を代表する知の巨人、オーストリア出身の社会学者、P・ドラッカーの経営理論には、気づきにつながる考え方が多い。実はこの中に、子どもを勉強好きにするうえで「使える!」という考え方が存在する。
それは、子どもの「得意なこと」や「好きなこと」を伸ばすというものだ。
先月、このコラムで述べた「夢中になっていることを応援する」というのも、この考え方に近いものだが、主要科目に限定して言えば、算数が得意な子は算数を、社会科が好きな子は社会科を、とことん伸ばしていただきたいのだ。
もちろん、子どもはこの先、どこかの段階で必ず受験を経験しなければならないので、得意な科目や好きな勉強だけをやっていればいいというものではない。
もっと言えば、テストで九〇点以上取れる得意科目を伸ばしたところで、十点しか上積みできないが、苦手科目を克服すればより多くの得点アップが期待できるので、得意な科目や好きな科目を強化することは、「受験に勝つ」というセオリーからは外れることになる。
しかし、実社会に出ると、誰にも負けないと思える分野があること、三度の食事も忘れるほど打ち込めるものがあるということは、大きな財産になる。いや、財産どころか、激動の時代を生き残っていく何よりの武器になるのだ。
「国語はまあまあなのに、それに比べて算数は…」
親としてはこのように思いたくなるところだが、「国語に強い=子どもには将来の武器がある」と前向きに考え、子どもにも、「国語が強いということはすばらしいこと」というメッセージを送ろう。
とはいえ、得意なことがもっと得意になり、好きなことがもっと好きになると、他の科目への波及効果も期待できる。
「○○ちゃん、国語の読解力がすごいね。算数はもうひとつだけど、その読解力で問題をよく読んでごらん。必ず答えにつながるヒントが見えてくるから」
「理科はクラスで一番か…。えらい! じゃあ今度は社会科もがんばってみよう。そうしたら二冠王だよ」
このようにパパやママが、子どもの得意科目をだしに使ってポジティブな言葉がけをすれば、まだまだ素直に聞く耳を持っている小学生のうちであれば、その気になってくれる確率は高くなる。
「そんなこと言われても、うちの子はすべての科目が得意じゃない」
という親もいるかもしれないが、その子なりに「得意なこと」や「好きなこと」は必ず存在するので、そこを引っ張りあげる感覚でいこう。
清水克彦しみずかつひこ
びわこ成蹊スポーツ大学特任教授
文化放送入社後、政治・外信記者を経て米国留学。帰国後、ニュースキャスター、南海放送コメンテーター、報道ワイド番組チーフプロデューサー、解説委員などを務める。大妻女子大学や東京経営短期大学で非常勤講師を…
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