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2012年11月15日

太陽光発電だけじゃない、ソーラーエネルギー利用

■太陽熱で24時間発電する

前回は、太陽光発電が電力ピーク対策の強力な武器となりうる事をご紹介しましたが、太陽エネルギーの利用法は、太陽電池を使った発電だけではありません。

太陽光を虫眼鏡で集めると物を燃やすほどの熱が得られるように、鏡などで太陽光を集中させて高温を作り出し、蒸気を発生させて発電する、太陽熱発電という方法があります。

高温をオイルや溶融塩といった液体に貯め、断熱性の高いタンクに入れておけば、曇っても、夜になっても、少しずつ熱を取り出し、安定して、あるいは必要に応じて出力を変動させながら発電することができます。集める熱の量と、発電に必要な熱の量のバランスによりますが、設計次第で24時間発電を続ける事もできます。

こうしたメリットから、世界的には今後の主力のエネルギーの1つとして考えられていて、すでにスペインのヘマソラール発電所(約2万kW)のように24時間発電を開始しているところもあります。
蓄熱設備を持たない所もありますが、現在稼働中の太陽熱発電所の出力は世界で合わせて約200万kW、建設中が約250万kW、計画中が約1000万kWあります。

当然、日照時間が長く、晴天率が高い、低緯度の乾燥した地域が有利ですが、日本でも三鷹光器が、東京都三鷹市で57kWの発電が可能な設備の開発に成功していますし、長野県富士見町には、250kW級の設備ができました。すでに溶融塩9tを600度に加熱し、400度の蒸気を継続して発生させる事に成功しています。

太陽熱発電には、発電だけでなく、余熱も利用するコージェネレーションが可能であるという特徴があります。
長野県の施設では、農業用ハウスの冷暖房にも利用する計画となっています。暖房は当然ですが、吸収式冷凍機という設備を使えば、余熱を使って冷房をする事もできるのです。太陽エネルギーで年間を通じて空調する事で、外気導入によって害虫が入る余地をなくし、完全無農薬栽培を実現する予定との事です。

さらには、宮崎県、宮崎大学、新潟大学と三鷹光器は、太陽熱で蒸気を発生させるのではなく、高熱を利用して水素を作り出す方法を研究しています。水素ができれば貯蔵が可能ですし、燃料電池で発電と熱利用をしたり、燃料電池自動車や水素エンジンの燃料にしたりする事も可能になります。

今後、世界的に水不足が深刻化すると予想されていますが、太陽熱発電は高熱を利用し、海水を蒸留して淡水化できる魅力もあり、ますますの需要拡大が見込まれています。

そこで、日本企業も太陽熱発電の産業化に向けた研究会を設立しています。参加企業は、旭硝子、三井造船、Jパワー、JFEエンジニアリング、三鷹光器など現在28社。定期的に全体会合や分科会を開いていて、国際標準化に向けた国際会議にも代表が参加するなど、各企業の連携、ビジネス拡大への動きを活発化させています。

日本では、30年前に集光精度の悪い設備で行われた太陽熱発電の実験以来、「日本では太陽熱発電はできない」という烙印が押され、長らく無視された状態が続き、今回の再生可能エネルギーの固定価格買取制度でも範囲外となっています。
日本では太陽熱で発電しても、電気を買い取ってもらえないため、発電能力の確認までしかできていないのが現状です。日本でも十分発電が可能であることが分かった以上、早期に買取対象に入れ、普及につなげていく事が必要でしょう。

高度で大規模な工場が必要な太陽光発電と違い、太陽熱発電の各設備は、中小企業でも製造可能で、雇用拡大にも繋がります。太陽熱発電を普及させる政策は、エネルギーの安定供給はもちろん、経済対策としても有効でしょう。

■太陽熱利用も再注目

日本ではソーラーエネルギー利用の先駆けとも言える、太陽熱温水器が、1980年代に年間数十万台も売れていました。しかし、悪質な訪問販売が社会問題となるなどして敬遠されるようになり、年間数万台と低迷状態が続いています。

しかし、太陽光発電が現状では太陽エネルギーの10~20%しか利用できないのに対し、太陽熱温水器は、40~60%も活用できるのです。再生可能エネルギーの一つとして見直す価値は十分にあると言えます。

従来からの屋根の上で温めた水をそのまま使う方法の他、不凍液などの熱媒を循環させ、その熱で湯を沸かすソーラーシステムもあります。従来の方法では、屋根に200kg以上の重量がかかるため、建物への負担が大きい問題がありましたが、ソーラーシステムなら、湯を貯めるタンクを下に設置できるため、大型化しやすく、風呂だけでなく、全館の給湯や暖房も可能になります。

また、産業向けでは、ボイラー用の水を太陽熱であらかじめ温める事で、加熱エネルギーを節約する装置もあります。

自治体によっては補助金を出すところもありますから、立地条件や必要とする熱の量等にもよりますが、給湯システム、ボイラー設備の更新時など、検討してみる価値はあるのではないでしょうか。

富永秀一

富永秀一

富永秀一とみながしゅういち

環境ジャーナリスト

私はアナウンサー時代から、環境に関する番組を制作してきました。現在は“無理なく続けられるエコライフ”をメインテーマに、テレビ番組制作、ネット放送、書籍・記事執筆等により情報発信中です。講演では、環境・…

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