独立行政法人国立青少年教育振興機構が二〇一〇年十月に発表した「子どもの体験活動の実態に関する調査研究報告書」で、興味深い調査結果が明らかになった。幼少期から中学生期までに、「動植物との関わり」や「地域活動」、それに「自然体験」や「家事手伝い」、お墓参りをしたり、家族の誕生日を祝うといった、さまざまな体験を重ねてきた高校生ほど、思いやりがあり、意欲が旺盛で、人間関係能力も高いというのだ。
この数年、「経済格差」が「学力格差」を生むなどと言われてきたが、報告書をまとめた千葉大学教育学部の明石要一教授は、
「『経済格差』が『学力格差』を生むのではなく、『経済格差』が『体験格差』を生み、それが『学力格差』を生む」と結論付けている。
筆者もこれまで著書のなかで、お手伝いの重要性や家族のコミュニケーションの大切さについて言及してきたが、同様に、「動植物を育ててみる」や「お祭りや清掃活動など地域の行事に参加させる」、そして、家族で海や山に出かけキャンプをするなど自然体験を積ませることもまた、弱いものをいたわる気持ち、人の役に立とうとする意識、自然との共生感を養ううえで重要なことだと思う。
実際、難関とされる国立や私立中学合格者のなかで、「この子は机のうえの勉強ができるだけでなく、しっかりした考えを持っている子だな」と感じる子どもの多くは、小学生時代、確かに塾で勉強もする一方、次のような体験を重ねている。
○動植物との関わり
ペットなどの世話をする/昆虫を飼育する/草花をタネや球根から育てる
○地域活動
夏祭りに参加する/地域清掃に加わる/近所の子どもと遊ぶ/近所の人と話す/市民運動会などに参加する
○自然体験
海や川で遊ぶ/魚を釣ったり貝を拾ったりする/野山でキャンプをする/夜空の星を観察する
○家族行事
誕生日を祝う/旅行に出かける/美術館や博物館に行く/親子でコンサートやミュージ
カルを楽しむ/お墓参りをする/親戚の家に寝泊りする
これらは、夫婦にその気さえあれば、それほどコストをかけず体験させることができるものだ。どんどん体験させて、子どもの知的好奇心やみずみずしい感性を育てたいものだ。
清水克彦しみずかつひこ
びわこ成蹊スポーツ大学特任教授
文化放送入社後、政治・外信記者を経て米国留学。帰国後、ニュースキャスター、南海放送コメンテーター、報道ワイド番組チーフプロデューサー、解説委員などを務める。大妻女子大学や東京経営短期大学で非常勤講師を…
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