東アジアカップの開幕戦で、日本は中国と3対3で引き分けました。韓国で開催されているこの大会には、ヨーロッパでプレーする海外組は呼ばれていません。FIFA(国際サッカー連盟)が定める国際Aマッチデイに行なわれる大会ではないため、各国のサッカー協会は基本的に選手を拘束することができないのです。
日本にもマンチェスター・ユナイテッドやアーセナルがやってきましたが、欧州各国のクラブはまさにいまシーズン開幕前の大切な時期を過ごしています。本田圭佑がプレーするロシアのように、すでに開幕しているリーグもあります。各クラブが海外組を手放すはずがありません。韓国もオーストラリアも、同じような事情を抱えています。
このため、アルベルト・ザッケローニ監督はJリーグでプレーする選手でチームを編成しています。選ばれたメンバーはそれぞれに個性があり、所属クラブで結果を残してきた選手たちです。ロンドン五輪に出場した選手もいます。彼らがどれぐらいできるのかには、私自身も注目しています。
ポイントはセンターバック、ボランチ、フォワードでしょう。W杯アジア最終予選とコンフェデ杯を戦ってきたチームがバージョンアップするために、新戦力の台頭が望まれるポジションです。
気になることがあるとすれば、ザッケローニ監督のもとで主力を担ってきた選手が、今回のチームにはひとりも含まれていないということです。
中国戦では槙野智章のクロスから、柿谷曜一朗がヘディングシュートを決めました。素晴らしい展開から生まれたゴールですが、いつもの代表なら槙野ではなく長友佑都が左サイドバックです。1トップを務めた柿谷の周りには、本田圭佑や香川真司、岡崎慎司らがいるはずです。
そのなかでも、柿谷はヘディングシュートを打ったポジションに走り込めるのか。パスの出し手が変わり、周囲の選手も違う状況で同じようなパフォーマンスを見せられるのかは、実際にプレーしてみないと分かりません。まったく別と言っていい日本代表で活躍しても、戦力になれるかどうかは見極められないのです。今回の東アジアカップはあくまでも参考資料に過ぎないというのが、私の意見です。
たとえば、遠藤保仁、今野泰幸、前田遼一、中村憲剛らを招集すれば、既存の選手との関係を見極めることができます。「こういうときは、こうやって動く」というチーム戦術を、彼らを通じて浸透させることもできます。
遠藤と今野はJ2のガンバ大阪に所属していて、J2は東アジアカップ開催中もリーグ戦があります。先のコンフェデ杯の期間中もリーグ戦があり、ガンバは彼ら抜きで戦った。サッカー協会からすれば、立て続けに迷惑をかけられないという思いがあるでしょう。
ですが、東アジアカップがこの時期に行なわれるのは、もうずいぶん前から分かっていたことです。様々な状況に対応する時間はありました。そう考えると、遠藤と今野を呼べなかったことが、少し残念に思えてくるのです。
中国戦の内容にも触れておきましょう。一度は3対1とリードしながら3対3の引き分けに持ち込まれたのは、やはり物足りないと言わざるを得ません。
前述したように、今回はレギュラークラスのいないチームです。しかし、過去に招集された経験のある選手はいます。ザッケローニ監督の戦術を知る選手はいるわけです。
参加国のメンバーや状況を踏まえると、日本は十分に優勝を狙うことができるでしょう。そこで、成果を上げられなかったとしたら―。
どのような結果になるにしても、ザッケローニ監督には「時間がなかった」と言ってほしくないですね。彼のもとで戦うようになって、すでに3年が経過しています。バックアップ層に戦術を浸透させる時間は、十分にあったのですから。
山本昌邦やまもとまさくに
NHKサッカー解説者
1995年のワールドユース日本代表コーチ就任以降10数年に渡って、日本代表の各世代の監督およびコーチを歴任し、名実ともに日本のサッカー界を牽引してきた山本氏。山本氏の指導のもと、成長をとげた選手達は軒…
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