今年の日本の夏は、猛暑に覆われ日々水分補給必須の厳しい夏でした。熱中症への気配りが最も大切な夏であったと痛感しています。そして、この猛暑をテーマに世界へ目を向けてみると、さらに想像を絶する暑さが襲いかかってきます。日本の猛暑は38度、この数値だけでも要注意ですが、世界の酷暑はさらに過酷なものであります。現実として日中の気温が50度を超える地域がたくさんありました。湿度のばらつきがありながらも50度を超える酷暑の体感気温はサウナの熱風を浴びている錯覚を感じるほどでした。あまりの暑さにフライパンを屋外に出して、太陽熱だけで目玉焼きが焼けるのではないかと実験したこともありました。(現実はふちが少し焼けただけでした。)世界の猛暑の中でも特に印象に残ったのは中東にあるイラク。その激暑は屋外での撮影を中止せざるえないほどのものでした。
イラクは肥沃な三日月地帯と呼ばれるメソポタミア文明発祥の地です。文明を生んだ二つの大河、チグリス河とユーフラテス河が国を縦断しており、この大河に子供たちが猛暑の中、次々と飛び込む光景が真夏の風物詩となっていました。戦争の混乱によって電力事情や給水設備が不安定なイラクでは、各家庭で日常的に断水状態がつづき、水道を使う概念は稀でした。川の水や地下水を汲みあげて溜め水をすることで生活用水を確保していく。毎年繰り返される酷暑故に誰しもが水の大切さに敏感でした。
もう一つ、水に関するイラクの特徴は人が集まるところには、水道がなくとも水が手に入る法則があげられます。バス停や市場にあつまる群衆の中には、必ず大きな土製水瓶が置かれていて、誰でも自由に水を口にすることができました。孫がおばあちゃんをリヤカーに乗せて水瓶場へ猛然と案内している姿はイラクならではの光景でした。さらにイスラム教が大部分を占めるイラクでは毎週金曜日に合同礼拝を行います。その礼拝所には水瓶の配置はもちろん、水噴射というサービスまで行われていました。これは若者たちが背中に背負った水タンクからレバーを何度も押し上げて、霧状の水を礼拝する方々に吹き付けていく、斬新な水分補給の方法でありました。
イラク取材で気づかされたことは、水とは水道から当たり前に出てくるものではないということ。そして、水の有効使用を心がける知恵があふれていることでした。水の使い方次第でいかなる酷暑も乗り切ることができるとイラクから学ぶことができました。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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