2013年の日本代表の活動は、11月19日のベルギー戦で終了となりました。同時に、ワールドカップ出場国がすべて出そろい、来月上旬には本大会の組み合わせが決定します。2013年もあと1カ月ほどとなり、ワールドカップへ向けた出場国の強化は最終段階に入っていきます。
アルベルト・ザッケローニ監督率いる日本は、どのような状態にあるのでしょうか。
オランダと対戦した14日の試合前に、サポーターがメッセージ性の強い横断幕を掲げました。ここ最近の試合内容はもちろん、ザッケローニ監督の選手選考や選手起用などへの不満を示したものです。
そのオランダ戦で2点を先行されながら引き分けたことで、向かい風にさらされていたチームは落ち着きを取り戻したようです。少なくともメディアは、チームが浮上するきっかけをつかんだと報道しています。
これからワールドカップに向かっていくチームを、どのように評価すればいいのか。
私は結果を重視します。
数多くの試合を消化し、どれだけ勝点を稼いだかを競うリーグ戦なら、試合内容も大切です。しかし、代表は1試合、1試合が勝負です。常に結果が問われるのです。
過日、17歳以下(U-17)のワールドカップが開催されました。日本もアジア予選を勝ち抜いて出場し、グループステージを首位で突破しました。
決勝トーナメント1回戦の相手は、スウェーデンでした。それまでの戦いぶりを比較すれば、日本が有利との見方がひろがっていました。 ところが、日本は1対2で敗れてしまうのです。
この試合で日本は、75パーセントものボール支配率を記録しました。ピッチ内でゲームが進行している時間の4分の3は、日本はボールを持っていたわけです。
自分たちがボールを支配していれば、相手に攻められることはありません。つまり、失点をする可能性がない。世界中でボール支配率が重視されるのはそのためで、ワールドカップでここまでの数字を残したのは、掛け値なしに評価されるべきす。若年層の強化にも携わってきた私は、「日本もここまでステップアップしているのだ」という思いを強く抱きました。
しかし、勝つことはできなかった。この現実から目をそむけてはいけません。
スウェーデンの立場から考えると、計算どおりだったと思います。激戦のヨーロッパ地区で戦っている彼らは、力関係で上回る相手、自分たちが少し劣る相手、かなりの劣勢が予想される相手など、様々な力関係のなかで戦っています。自分たちの得意なサッカーだけをしていては、勝利はついてきません。目の前の相手をどうやって攻略すればいいのかに、いつも頭を巡られています。
日本のようにボールを支配できるチームとの対戦も、初めてではありません。果たして、ボールを持つことに長けた日本に「ボールを持たせること」を前提に、彼らはゲームプランを組み立ててきました。自陣に日本を引きずり込み、カウンターを仕掛けてきたのです。スウェーデンからずれば、してやったりの展開だったでしょう。
あのメッシを擁するFCバルセロナ(スペイン)は、ボール支配率を武器にしています。だからといって、「ボールを支配すること」と「いいサッカー」は、イコールで結ばれません。ボール支配率を得点につなげ、勝利をつかむサッカーが、評価を集めるのです。「ボールを持つ」というのは、勝つためのひとつの手段でしかありません。
ザッケローニ監督の日本代表も、自分たちで主導権を握るサッカーを標榜しています。オランダ相手にも、テンポよくボールをつなぐ時間を作りました。
しかし、ワールドカップで同じサッカーができるとは限りません。できない確率のほうが高いでしょう。ワールドカップになれば、オランダは徹底的に相手を研究してくるからです。日本にボールを持たせてカウンターを狙ってきても、不思議ではあません。何よりも結果が大切というのが、彼らの揺るぎない価値観だからです。
サッカーの得点パターンは、ボールを支配した展開から、カウンターから、セットプレーから、の三つがほとんどを占めます。ボールを支配することへの強過ぎるこだわりは、落とし穴にはまることになりかねません。三つの手段をバランス良く使いながら、ゴールを狙っていくべきなのです。
ワールドカップ予選や本大会になると、世界のスーパースターが普段と別の顔をのぞかせます。所属クラブではエレガントなプレースタイルの選手が、ユニフォームを汚してでもボールに食らいついたりする。
彼らは知っているのです。
努力や過程に満足するのは二流に過ぎない。
一流はどこまでも結果にこだわるのだ、と。
山本昌邦やまもとまさくに
NHKサッカー解説者
1995年のワールドユース日本代表コーチ就任以降10数年に渡って、日本代表の各世代の監督およびコーチを歴任し、名実ともに日本のサッカー界を牽引してきた山本氏。山本氏の指導のもと、成長をとげた選手達は軒…
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