目に見えない新型コロナウイルスの不安
世界各国での新型コロナウイルス感染拡大。その対応に温度差が広がっています。国によっては緊急事態宣言発令のもと、都市をロックダウンすることでウイルスの拡散を抑えこんでいく。その手法はまさに戦時下で生き延びるための孤立状況に重なるものがあります。ニュースで伝えられる新型コロナウイルスの感染者数拡大グラフからのしかかるインパクトは強烈なものがあり、ブレーキングニュースとして各局がその動向を追跡。ウイルスの不安が底なし沼のように生活の中に染み込み、見えない敵との戦いか、今後の共生なのか、誰も答えを見いだすことはできません。
世界各国の自国ファーストと香港情勢
新型コロナウイルスへの恐怖心は、国際情勢上では強硬外交、強権体制への揺り戻しを起こしていることが明確になってきています。かつて一国最強を謳ったアメリカ合衆国は、爆発的な感染者数の拡大でトランプ大統領の政治基盤が脆弱化。トランプ大統領自身が掲げた自国ファーストはコロナ禍で世界各国の自国ファーストを加速承認する方向で外交は合致。その最たる特徴は香港情勢で如実に現れています。香港への中国中央政府による行政介入を容認する国家安全維持法が施行され、反政府の抗議デモを展開してきた民主派の指導者たちが次々と拘束されていく現実。1997年にイギリスから香港の返還がなされた折には、今後50年間は一国二制度という香港の高度なる自治を約束する規約を掲げ、世界に誇る金融都市としてその名を轟かせてきました。自由と民主主義という香港の基盤は中国政府に楯突くことで抑圧下に置かれ、民主派の牙城であった大規模抗議デモは新型コロナウイルス感染拡大を理由に開催を禁止される事態に陥っています。
国民の不安が権力の一極集中を強固にする
香港に限らず、新型コロナウイルスへの国民の不安が各国の強権体制を強固なものへ変質させています。微笑みの国タイでは、暫定軍事政権時代の影響が色濃く残るプラユット首相政権側が民主派運動員の逮捕や野党の解党命令を発令。民主選挙を経た政治体制とは程遠い現状が際立てきています。ロシアのプーチン大統領は憲法改正を国民投票にかけ、長期政権を保証する憲法の土台を固めました。中東のイラクでもウイルス問題が生活に染み込んでおり、脆弱な医療体制、政権の汚職問題に国民の怒りが爆発。大規模デモとなって政権を揺らしています。新型コロナウイルス感染拡大の影響は、全てが想定外ゆえに権力の一極集中、強制管理を促している構造が確認されました。収束の風が吹いた時には、すでに各国の強権不動の指導者が君臨しているのかもしれません。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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