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コラム 人権・福祉

2020年09月14日

ベラルーシ情勢・強権ルカシェンコ大統領と国民の衝突

民主派支持のEUとロシアの牽制

先日行われたベラルーシの大統領選挙。1994年から約26年間大統領職を独占するルカシェンコ氏が選挙戦の圧勝を宣言。選挙期間中は有力野党候補を拘束、選挙不出馬に追い込むなど暴力的な選挙過程が確認されており国民の怒りが暴発。事実上のルカシェンコ独裁体制に対しベラルーシ全土に反政府運動が急拡大。選挙不正や民主的な自由選挙を求める市民が首都ミンスクに10万人規模で集結し、ルカシェンコ大統領の退陣を掲げ再選挙を要求しました。欧州連合(EU)も民主派のメッセージに賛同。選挙不正に関わったルカシェンコ陣営の幹部に制裁を課すことを発表しました。即座にこうした民主派の国際的な連帯をロシアが牽制。ルカシェンコ大統領就任支持を発表し現在のベラルーシ体制を今後も支援していくメッセージを世界に配信しました。

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ロシアとベラルーシの関係は旧ソ連時代に遡ります。ルカシェンコ大統領が率いた約26年間の長期政権の中身は、経済活動や経済支援をロシアに依存。旧ソ連型の国家運営、特に国営企業を基幹産業とした政治経済体制は、民主的な自由競争や国際的な経済外交を抑え込んできました。その結果、国内総生産が半分近くに落ち込み、国民は生活基盤の崩壊を押し付けられてきました。大統領選挙期間中に民主派候補者が拘束されたり、国外逃避を余儀なくされている事実は世界配信されてきました。不公正な選挙そのものを非難する声は国際的に強まっていましたが、ロシアのプーチン大統領によるルカシェンコ政権支援が明確になったことで、かつてのウクライナ内戦・クリミア半島の軍事占拠の反省と恐怖が想起されました。

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ベラルーシが恐れるウクライナ内戦の悪夢

ベラルーシの隣国ウクライナでも2014年、民主派とウクライナ東部の独立を掲げる親ロシア派武装勢力が衝突。ロシアに依存する住民が多かったクリミア半島は独自の住民投票やロシアの軍事介入によって強制占拠されてしまいました。ウクライナ内戦では多数の市民が犠牲となり、和平交渉を模索するも繰り返し失敗。現在は政治経験のなかったゼレンスキー大統領がドイツやフランスの仲介でロシアのプーチン大統領と停戦の合意に至りました。局地的な戦闘が一部確認されるも新生ウクライナとしての一歩を歩んでいます。ベラルーシのうねりがウクライナの混乱に重なると内戦の悪夢に陥ってしまう可能性があります。ベラルーシで起こっている変革への注視が必要です。

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渡部陽一

渡部陽一

渡部陽一わたなべよういち

戦場カメラマン

1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…

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