スペインの地中海側に位置するイビサ島は、世界一夕陽がキレイだと言われています。旅好きの私としては、近く旅行したいと資料を集めていました。先日、銀座の百貨店のコスメフロアを歩いていると目に飛び込んできたのは「EIVISSA DREAM」というコピー!柔らかな光の中、こちらを見つめるモデルのきらめくまなざしが印象的なルックのパネルでした。
思わず立ち止まってしまったところ、「何かお探しですか?」と、すかさず販売スタッフに声をかけられました。振り返ると、そこには「研修生」と書かれたネームプレートを付けた女性が立っていて、奥のカウンターからは先輩らしき販売員が、接客を促す仕草も目に入ってきます。
残念ながら、ふくらみかけた「私のイビサへの夢」は一気にしぼんでしまいました。ちょうどその日は、春夏のキャンペーンの初日、新色、新アイテムが発売の日とあって、私の横にはお目当てのコスメを買いたい女性が列を作っていたのです。「ブラッシュのFascinated」とか「ネイルのCelebrity」「リップグレイズのAmnesia」等々、事前のチェックで試したい色が決まっているか、買うものが決まっている女性たちは次々とアイテムごとに指名買いしていきます。私のように夢見ている場合ではないというのが、いまのコスメカウンターの現実だと思い知らされました。
久しぶりにコスメフロアをゆっくり見ようと思ったのは、実は去年、体調を崩したせいもあって、出張も控え旅行どころではなかったので、春に向かってメーク道具も一新して気分転換するつもりでした。コスメは指名買い、という現場では「買いそうにもない人」に見られたのかもしれません。そこで研修生の接客にピッタリと思われたのは、かなりショック。やっぱり売り場で一番センスがありそうなキャリアのある人に接客されたいと思っていたのですから。
本当なら古いメーク道具を捨てて、今シーズンものにすべて入れ替えたかったメークポーチはバッグから出さずに、ヘビーユースしている「アイラインのRabbit Hole」のカートリッジだけを買い換えることにしました。
「イビサの夕陽を見に行きたい」といった夢が共有できるような接客を受けていれば、私の「大人買いする気満々だった女心」をつかむことができたはず。コスメは道具でありながら、いくつになっても夢に繋がっているもの。「何かお探しですか?」ではなく「一緒にお探ししましょうか?」というように、私の気持ちに寄り添ってくれるスタッフがついてくれていたなら、全部買い揃えたうえ、リピーターになっていたに違いありません。
中村浩子なかむらひろこ
株式会社ヴィーナスプロジェクト 代表取締役社長
大学在学中より、光文社「JJ」において、ファッション・ライフスタイル担当の特派記者となる。その後、小学館「CanCam」を経て、光文社「VERY」、「姉VERY」、「STORY」の創刊記者を務める。オ…
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