DXについてのお話をするときに、高い頻度で話題になるのが「RPA(Robotic Process Automation」(ロボットによる業務自動化)です。そのコスト削減効果が高いことから、日本企業ではここ数年RPAツールが盛んに導入されています。中にはRPAの導入によってDXが完了したとお考えの方もおられますが、私はこれについては少し注意が必要だと思っています。
受発注処理や会計処理、在庫管理など、人間が行っていた業務プロセスをコンピュータで行わせるのがデジタル化の第一歩ですが、その過程で、コンピュータに移行できない業務がどうしても発生します。
たとえば、受発注処理のためのコンピュータシステムはあるが、客先からは注文書がFaxで送られてくるような場合です。このような時は、注文書を事務員がExcelに手入力して業務システムに入力する、といったような対応が必要になり、それを行っている会社も多いと思います。しかし、件数にもよるでしょうがこれは大変な手間です。時間もかかりますし、入力ミスもあるでしょう。
この場合RPAツールを導入すると、注文書をスキャナで(あるいはそのままFaxデータとして)読み込み、OCR(手書き文字認識)で文字化してExcelに入力するところまでを自動的に行ってくれます。人間が手作業で行う事を肩代わりするわけです。
コンピュータに詳しくなくても何をしているのかがわかりやすいですし、時間も人件費も目に見えて節約できることから、導入が盛んになっているというわけです。それはそれで素晴らしいことですが、ここでよく考えておかなければならないことがあります。
そもそも見直すべきは、注文の受け方では無いのか、ということです。客先から注文書をExcelデータで送ってもらう、あるいは客先の業務システムと自社システムをデジタルで接続できれば、一旦印刷してFax、それを手入力などという手間は省けるはずです。
昔はできなかったかも知れませんが、今ではさまざまなテクノロジーを使えば低コストでできるかも知れません。それを考えることがDXだということもできます。
それがどうしてもできない(客先が対応してくれない、多大な費用がかかる)場合にのみ、RPAの導入を検討すべきでしょう。RPAは導入が簡単で効果も出しやすいですが、非効率な業務プロセスを小手先で効率化するだけであり、業務プロセスを抜本的に見直すチャンスを失うことになります。将来それがさらに大きな問題となる可能性も否定できません。
本コラムの第2回(2020.3.5)「DXの3つのフェーズとは」で書いた例に照らせば、第1段階のアシスタントをRPAに置き換えて、そのまま第2段階以降への進化を止めてしまうようなものです。
とはいえ、自社ではどうにもできないプロセスも多く有ります。政府による規制や法務上の問題などがあると、RPAしか選択肢がない場合も多いのです。銀行業務などでRPAの導入例が多く、効果も上げているのは、その辺の事情もあると考えられます。しかし、そうでない場合、RPAの導入にはもう少しだけ慎重になるべきでしょう。
大越章司おおこししょうじ
株式会社アプライド・マーケティング 代表取締役
外資系/国産、ハードウェア/ソフトウェアと、幅広い業種/技術分野で営業/マーケティングを経験。現在は独立してIT企業のマーケティングをお手伝いしています。 様々な業種/技術を経験しているため、IT技…
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