菅新政権は、「デジタル庁」創設に向けた基本方針を年内にまとめるよう指示しており、河野太郎行政改革大臣が行政手続きでの「ハンコの廃止」を全府省に要請するなど、国全体がデジタル化に向けて大きく動こうとしています。
そもそもデジタル化とは何かというと、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」とも呼ばれ、“進化し続けるデジタル技術により人々の生活をより良いものへと変えていく”ことになります。
行政のデジタル化が進むことにより、住民の利便性向上と行政運営の効率化が期待されています。例えば、コロナ禍で一人につき10万円の特別定額給付金の支給は、デジタル化がきちんと整備されていれば、より円滑でスピーディーに行うことができたはずといわれています。また、縦割りであった省庁間の連携が今後デジタル化によって進めば、様々なサービスが可能となると期待されています。
では、デジタル化には良いことだけしかないのでしょうか?以下にメリットとデメリットをまとめてみました。
メリット
- 24時間どこからでも操作が行える
- 書類を簡単に見つけることができる
- データをコピーしても劣化しない
- ペーパーレス化によって、印刷費や郵送費、保管費といったコストが削減できる
- 大量データの分析、蓄積の高速化
- 人件費の削減
デメリット
- パソコンに詳しくないとできない
- 不正アクセスやセキュリティ面で不安
- システムを作るのにお金がかかる
- 業務が忙しく時間がない / 面倒くさい
- リスクを取って変革したくない
- 直接のコミュニケーションが減る
確かにデメリットもありますが、ほとんどはデジタル化導入前の問題です。つまり、わからない、難しいから手をつけられない、という問題が大半なのです。
デジタル化の成功事例では、神奈川県の老舗旅館「陣屋」がメディアでも頻繁に取り上げられています。陣屋は、10年前は10億円の借金を抱え、あと半年で倒産というところまで追い詰められていましたが、ITの活用により徹底的な業務効率化を進め、顧客管理や予約管理など旅館経営で必要な機能がすべてそろった業務システムを自社開発しました。今では、他社への提供も行っているほどです。
ただ、陣屋の例は極端な成功例ですので、自分の会社では難しいと思っている企業の方も多いと思います。しかし、小さなデジタル化でも十分に効果が出ている事例もたくさんあるのです。その例を一部ご紹介しましょう。
不動産会社Mのケース
東京に存在する不動産会社をインターネットで検索して、土地や物件情報を集めていたが、成果が全く出なかった。
[問題点]
・東京にある不動産会社のリストが用意できていない
・どこにいつだれが電話したかが管理されてない
[解決策]
・インターネットに存在する東京にある不動産会社のリスト作成
・Googleスプレッドシートで状況を管理
IT会社Dのケース
社員のほとんどが、取引先企業にて派遣で仕事を行っているため、勤怠管理や経費精算に対する管理が大変で社員から不満が出ている。
[問題点]
・エクセルの内容をメールでやり取りしていたので、管理が煩雑になってしまっている
[解決策]
・クラウドシステムの導入により、勤怠管理や経費精算を効率化
このように、すべての業務でなく、一部の作業について基本的なシステムを使ってみることから始めるといいでしょう。Googleスプレッドシートのように無料のサービスから利用することも無駄なコストをかけずにデジタル化を進める第一歩です。
ただし、事業規模や業種、社員のITリテラシーによって、どのような業務にデジタル化を行えばよいかは企業によって異なります。それについては次回ご説明します。
久原健司くはらけんじ
株式会社プロイノベーション代表
1978年生まれ。 2001年東海大学工学部通信工学科卒業後、ITの人材派遣会社に入社。大手コンビニエンスストアのPOSシステム保守運用業務を担当する。2003年からソフトウェア開発会社で、システム…
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