ACミラン加入から1か月ほどが経ち、本田圭佑の立場が変わってきました。期待感が相当に高かったぶん、失望感をもたらしているようです。 実際のところ、ここまでのパフォーマンスは際立って良いとは言えません。だからといって、ひどく悪いわけでもない。平均的といったところです。 状況を難しくしたのは監督交代でした。クラレンス・セードルフ新監督は、本田を4-2-3-1の「2の右」で起用しています。前所属チームのCSKAモスクワでもやったことのあるポジションですが、役割は異なります。 オランダ人のセードルフ監督は、2列目の選手にウイング的な働きを求めます。タッチライン際で起点となり、自らドリブルで仕掛けたり、シュートへ持ち込んだりするのが本田のタスクになります。トップ下と呼ばれる2列目の中央の選手と、ポジションを入れ替えることは望まれていません。 セードルフ監督のサッカーに基づくと、ピッチ上ではどのような現象が起こるか。 攻撃を担う選手の距離が遠くなります。パスを受けてもワンタッチでさばくける範囲に味方選手がいないので、一人ひとりがボールを持つ時間が長くなるのです。 本田は世界基準のフィジカルの持ち主ですから、ボールをしっかりとキープできます。簡単には取られません。 とはいえ、保持する時間が長くなければ、プレーの選択肢は狭められてしまいます。メッシのように何人もの選手を抜きさってゴールするというのは、さすがに期待できません。ボールを失う危険も高まります。 その一方で、本田は日本人らしい敏捷性と繊細なテクニックを備えています。チームメイトとお互いを感じられる距離を保ち、受けたボールをワンタッチでさばくのか、それとも自分で仕掛けるのかの判断にも優れています。 もちろん、ドリブルで敵陣に飛び込んでいくこともできますが、ラストパスも出せてシュートも狙える彼のポテンシャルを最大限に生かすには、もう少し柔軟なポジションを取れるほうがいい。ワンタッチプレーも使える距離感を築きたいですね。大型なディフェンダーを揺さぶる意味でも、ワンタッチプレーは効果的なのですが……。 本田の移籍後に加入したモロッコ人のアデル・ターブラトという選手は、セードルフ監督の戦術に合致したタイプです。タッチライン際からドリブルでゴールへ向かっていくプレーが持ち味で、セリエAデビュー戦でいきなりゴールを決めました。 イタリアのメディアから本田が批判されているのも、リーグ戦でのゴールがないからでしょう。トップ下で結果を残せなかったために、右サイドへ押し出されてしまった印象があります。本田を中心に攻撃をしていくという考えは、セードルフ監督にはないようです。 そうは言っても、攻撃の一角を担う選手として期待されているのは間違いありません。今後も右サイドで起用されるならば、監督やチームメイトと話し合いをしていくべきでしょう。トップ下のカカとは密接にコミュニケーションをはかり、ポジションチェンジができるような環境を作りたいですね。 とにかくいまは、リーグ戦でゴールをあげることです。 ここまでの本田は、セードルフ監督に課せられたタスクを忠実に表現しています。ただ、チームの一員としての役割を果たすだけでは、満点の評価を得ることはできません。少しぐらいバランスを崩しても、ゴールにつながればその判断は「正解」ということになります。得意の直接フリーキックでも、ゴール前の混戦から押し込む”ごっつぁんゴール”でもいい。1点取ることで雑音から解放され、本来の輝きを放つきっかけをつかめるでしょう。
山本昌邦やまもとまさくに
NHKサッカー解説者
1995年のワールドユース日本代表コーチ就任以降10数年に渡って、日本代表の各世代の監督およびコーチを歴任し、名実ともに日本のサッカー界を牽引してきた山本氏。山本氏の指導のもと、成長をとげた選手達は軒…
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