日本から飛行機で約7時間。東南アジア最大の人口を誇るインドネシアに入りました。ここは首都ジャカルタにある小学校。巨大な校舎に並ぶ教室からは子供たちの歓声が聞こえてきます。この学校の校長先生に伺いました。「教育の持つ力とはなんですか?」
校長先生はこう語ってくれました。「教育指針でのはじめの一歩は、この国の、どの地域、どの宗教の子供たちであっても、誰でも自由に学べる環境をこちら側から積極的に準備していくことがあります。そこでは私立の学校でも公立の学校でも、低学年から高学年、さらには中学生、高校生と子供たち同士が常に身近にいる環境を整えてきました。学校で先生から学ぶだけではなく、子供同士、特に年齢差のある子供たち同士が、身近にいる学び場を意識しています。多国籍、多宗教、多民族の土台を持つインドネシアでは、学年を超えた子供たち同士での交流が学ぶ環境も生活意識も活気づけてくれる。兄弟はもちろん、近所の友人やお兄さんお姉さんの姿が近くにあることが、学校では大きな力となっています。」
「もう一つの学び場の意識は、両親の話に耳を傾けることが挙げられます。平日の授業が終わると母親たちが学校を訪れて、校長先生や主任の方々と直接お話をします。クラスの順番に沿って、父母の皆さんとの時間を大切にしています。学校のこと、自宅でのこと、母親同士の会話の中にも先生たちが普通に同席します。子供たちの声や勉強の課題はもちろん、ご近所での井戸端会議にも耳を傾けていきます。こうした時間は、地域全体が子供たちとつながっている環境を再認識できる時間といえます。」
この学校で実際に授業風景を参観させていただくと、基礎教育の授業はもちろん、課外授業には、バリ舞踊のような伝統芸能が組み込まれていて、子供たちが自身でカリキュラム選んでいく特徴に目をひかれました。授業の間には、イスラム教の合同礼拝を行うことも学校の中での日課であり、多宗教ごとの慣習や伝統を守りながら、選択肢のある学び場を提供していることが際立っていました。子供たちが学ぶ表情から、先生、父母、地域で作り上げた学び場の熱意が伝わってきます。校長先生は最後にこう教えてくれました。「教育の持つ力……それは、思いやりを築くこと。」先生からの力強い言葉にハッとさせられる想いでありました。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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