最近、にわかに配偶者控除廃止の議論が出てきていますが、皆さんはこれについてどう思われますか?私のお仕事の形態はいわゆるパートタイムやフルタイムというような働き方ではなく、また個人で確定申告もしていますので我が家は配偶者控除の対象に当てはまらないのですが、共働き子育て世代ということで言えば、この議論の抱える問題には少なからず該当しています。
103万円と130万円の壁が、働く女性の意欲を削ぎ、機会を奪っている。だから無くす。0か100かの少し極端な進み方になっている印象がありますが、これはかなり深い議論が必要であると思います。個人的には、女性の社会進出により経済活動が促進されることは大いに賛成なのですが、子育て中の女性やこれから子供をと思っていらっしゃる方にとっては、まだまだそう簡単にはいかない部分があります。今の日本の社会構造のままでは子育てと仕事の両立はとても難しいですね。
ぱっと頭に思い浮かぶだけでも、問題点は山積みです。少子化対策のために沢山の子を「産めよ育てよ」と言われながらも、預ける場所がない。保育所に入れず託児所に預かってもらうにしても、月々にかかる利用料金はかなりの出費。そしてなんといっても、子供の急な怪我や風邪などのトラブルは頻繁にあるにも関わらず、風邪の時は保育所には預けられませんし、それによって「休みや出勤の融通を」とは言い出しにくい職場の空気感。社内では男性だけでなく、女性の目も厳しいという声もあります。世論もずいぶん変わってきたとはいえ、まだまだ男性の育児や介護への参加は少なく、女性の負担率は高いまま。挙げれば切りがありません。
一方で、年末頃「旦那に怒られたわ~。どうしてもシフトの都合上、頼むから入ってくれと言われて入ったら、時間の調整を失敗して103万円を超えてしまってん(泣)」という会話は”あるある”です。この会話の内容は、明らかに経済活動に消極的であることは否めません。税制が、もっと働けるはずの女性の機会を奪っているという見方もできます。しかし、繰り返すようですが単純にそれを撤廃したからと言って、狙った通りの税収アップや雇用の促進は図れないと思うのです。税制と社会構造の両方がよりよく変わっていく、その歩幅を合わせなければならないと思います。
私は子育てについて、これだけは母としてかく在りたいという思いがあります。あるテレビ番組を観て、改めて「そうだよな・・・。子供の可能性を広げるって、親の覚悟にかかってるよな」と。それはどんな内容だったかと言うと、フィギュアスケートに打ち込んでいる有望なジュニア選手の姿を追うというものでした。その生活は、自宅にお父さんを残し、お母さんとその選手とその姉(姉もフィギュアスケート有望選手)の3人が、プロの指導者からの高いレベルのレッスンを求め、その練習場へ通いやすい都市部に住まいを借り、お父さんが仕送りをするという、そんな環境で奮闘していました。
これはスポーツ界において稀なケースではありません。同じフィギュアスケートのことで言えば、ソチ五輪で金メダルに輝いた羽生選手も、被災などの大変な時期を経て、現在はお母様とカナダを拠点にトレーニングに励み、お父様と姉弟は地元に残っての生活をされています。他のスポーツ選手のエピソードを聞いてみても、例えばニューヨークヤンキース、イチロー選手のお父様の徹底ぶりたるや、本当にすごいのです。自営業だったから、従業員の皆さんの理解があったからとおっしゃられていましたが、それでも仕事をやりくりして、とにかく毎日野球の練習時間を捻出するのは大変なこと。二人で自主練習するという約束を高校に入るまで守り続け、高校に入ってからもプロに入ってからも、極力グランドに足を運び、イチロー選手の状態を遠くから見守り続けられていたというお話です。
そして、ここに並んで挙げさせて頂くのはおこがましいながら、私自身の選手時代においても、親から与えてもらった愛情、知恵、金銭的な支え、かけてもらった時間…とにかく惜しみなく私達子供の為に注いでもらったものの大きさを、今更ながら身に染みて感じています。私は我が子にここまで大きなものを与えられるだろうか?と、そんな思いになることもあります。
私が知る限り、アスリートのご家族の形態で多いのは、お母さんが専業主婦というこの現実。今、日本は政府主導で『世界で活躍する人材の育成』と銘打って様々な政策に着手していますが、ある意味、未来を担う人材=子供が、その世界のトップランナーとして活躍し極めていくということは、親の時間的、金銭的、とにかくありとあらゆることの犠牲の上に成り立っていると言ってもいいかもしれません。
親としては、我が子のためなら犠牲を払っているなんて思わないからやれるのだろうと思いますが、仕事の上でのキャリアを求めれば求めるほど、悲しいかな子供との時間は少なくなります。だから私は迷っていますし、答えがまだ見つけられていません。「私の仕事の仕方、これでいいのかな?子供が夢を持ったとき全力で応援体制に入ってやりたいけど、現状の何を変えていかなくてはいけないのかな?」と。もうすぐ2歳になる息子が「僕、これを頑張りたい!」と言ったとき、日本の社会のライフワークバランスにも変化があり、その時にはもう少し子供を育てる環境や雰囲気、インフラなどが整って、どうにかなるようになるのかもしれませんが、私はこの部分をもっともっと公に広く議論した方がいいと、そんなことを思っています。
武田美保たけだみほ
アテネ五輪 シンクロナイズドスイミング 銀メダリスト
アテネ五輪で、立花美哉さんとのデュエットで銀メダルを獲得。また、2001年の世界選手権では金メダルを獲得し、世界の頂点に。オリンピック三大会連続出場し、5つのメダルを獲得。夏季五輪において日本女子歴代…
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