アフガニスタンの最前線で治安復興支援活動を続けるアメリカ軍のなかでは、多数の女性兵士たちが力を発揮しています。戦場では屈強な男性兵士だけではなく、訓練と経験を積んだ女性兵士の姿が存在していました。兵士としての任務を繊細に正確にこなしていく技量に、性別という違いが挙げられることはほとんどありませんでした。
過酷な訓練を重ね、前線に送られてきた女性兵士たちは、優しい表情を備えながらも、戦場での任務遂行という激烈な緊張にさらされていました。戦闘用完全武装でイスラム武装勢力タリバーンとの前線に向かっていくことはもちろん、爆弾処理班としての危険物取り扱いや戦場の前線から前線に移動して行く装甲車の管理など、その重圧は想像を超えるものでありました。前線任務だけでなく、駐留する多国籍軍の広報活動やアフガニスタン政府側との交渉任務を背負う兵士も存在します。最前線だからこそ、部隊としてのチームワークと成果を求めていくことには、男性兵士でも女性兵士でも線引きはありませんでした。女性兵士の笑顔からは女性の優しさや艶やかさ、そして一兵士としての誇りと自信がみなぎっていました。
しかし、そんな強靭な女性兵士でありながらも、唯一女性らしさを垣間みせる瞬間がありました。それは前線にあるPXストアという兵士用のスーパーで出会った女性兵士の姿にありました。このPXストアには所狭しと商品が陳列され、食品から生活雑貨、さらにはDVDなど普通のスーパーと変わらない商品が、本国から輸送されて兵士用に売られていました。その中で女性兵士が目を向けていたのは、シャンプーやリンスの陳列棚。一つ一つを手に取り、成分表を丁寧に読み込んでから購入する姿は、女性らしさにあふれていました。キャンプ地での食事の時間には、テーブルを囲む部隊のなかに女性兵士がいるだけで華やかな雰囲気や優しい笑顔で覆われていました。
女性兵士も完全武装して戦場での任務をこなしていく。その技量に特別扱いはないからこそ、スピード、持久力、情報分析、女性兵士の存在力は光ります。任務を負えた後の寝床は、男女分けられたテントで、女性兵士も戦場用簡易ベッドで眠り、各々の寝袋に身を包む。任務中に時間が許せば、家族との国際電話や映画、ドラマなどの休日の過ごし方がありました。戦場にいる女性兵士たち、その存在力は今後さらに増していくことになると痛感しました。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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