先日、アギーレ新監督の来日、就任が報道されて、サッカーW杯の敗戦を久しぶりに思い出した人も多いのではないでしょうか。考えてみれば、期待を大きく膨らませるような発言をした選手や、かなり勝ち上がる可能性を予言していた解説者、彼らをヨイショしつづけたメディアは、都合が悪いからでしょうが、何事もなかったように敗戦を流してしまっています。今さら、蒸し返して責めるつもりはありません。しかし、これが私たち日本人の悪い癖であると認識する必要はあるでしょう。
当たり前ですが、振り返りや総括は重要です。たとえ悪い結果に終わってしまっても、問題やその原因を突き詰め、対策を講じておけば、次の機会に良い結果を得ることができるかもしれません。子供がテストで低い点数をとってきたら、大抵の親は「点数は構わないが、同じ間違いをしないようにしなさい」と言って、しっかり振り返るように促すはずです。これと同じことなのですが、どうも大人の世界では振り返りや総括が、ないがしろにされがちです。企業でも事業の失敗や不祥事に対して、うやむやにする傾向があります。
なぜ、そうなってしまうのでしょうか。当初から、責任の所在があいまいなままにスタートしているのが原因かもしれません。あるいは、悪い結果を振り返れば、誰か個人のせいになってしまい、それが可哀想、忍びないという気持ちになるのが原因かもしれません。しかしながら、個人攻撃をすることが目的ではなく、同じ過ちを繰り返さないこと、成功したならそれをもっと良い形で再現することが目的です。この目的をはずすことなく、情緒的でなく冷静に振り返らねばならないのは当然ですし、失敗の当事者やそれに協力した人も、潔く情報開示と自己反省を行わねばならないでしょう。
気になるのは、「前向き」という言葉。失敗しても、気にするな、くよくよするな、また頑張れば良い、前向きに考えようと言って振り返らない。もちろん、気持ちは分かりますが、無反省な再挑戦が良い結果を生むはずはありません。企業の現場においても、メンバーの気持ちに配慮してか、未来や理想に焦点を当て、前向きに考えようという姿勢のマネジャーが多くなっているように感じますが、やや楽観的、情緒的に過ぎないかと思うわけです。コミュニケーションスキルとしての「コーチング」の考え方も似たようなところがあります。済んだことに拘泥していてはダメだということで、どのようにすれば上手くいくのだろう、などと会話するわけですが、明るく肯定的な会話になるだけで、良い結果を得ることができるのかどうか・・・、大変疑わしい面もあります。
前向きは、客観的でモレのない総括と反省を前提としなければなりません。それは時に、ある人の判断ミスや努力不足を明らかにしてしまうかもしれませんし、組織に軋轢を起こすかもしれません。かと言って、それらを避け、互いに遠慮し、慮りながら前向きに行こうと言い合っているようでは、いつまでも良い成果は得られないでしょう。こんなことは、ワールドカップの敗戦、企業の失敗や不祥事、政治の世界の出来事などを引けば容易に理解可能ですが、自分たちに引き付けて考えてみる必要があるということです。安易な前向きさは、戒めなければなりません。
川口雅裕かわぐちまさひろ
NPO法人「老いの工学研究所」理事長(高齢期の暮らしの研究者)
皆様が貴重な時間を使って来られたことに感謝し、関西人らしい“芸人魂”を持ってお話しをしています。その結果、少しでも「楽しさ」や「気づき」をお持ち帰りいただけていることは、講師冥利につきると思います。ま…
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