コラム内で『教え子のその後を報告します』…と予告していましたが、その通り、今回はシンクロの今シーズン最後の全国大会が終了したのでその結果報告を兼ねて、前回からさらに成長してくれたところ、今後努力を期待したいところなどをレポートしてみたいと思います。
まず試合結果としては、決勝進出ラインにあともう一歩届かなかったという惜しいところでした。我がシンクロクラブにとっては躍進と言っていいのだろうと思いますが、やはり欲が出てしまうというか悔しさがあります。
結果はさておき、試合を通して大きな成長を感じさせてくれた部分がありました。それは技術というより日常の行動の部分に表れていたと感じます。
今シーズン始め、とにかく心掛けてほしいとミーティングの際に強く選手達に訴えたことがあります。それは挨拶と返事。本当にごく当たり前のことなんですけど、うちのクラブチームは恥ずかしながらそれがまだできていませんでした。聞いて気持ちのいい挨拶とはハキハキと、背筋も自然と伸びて言葉を発してくれていて聞き取りやすくということなのだと思うのですが、中学生ぐらいの選手にとってはなかなかこれが難しいようでした。
言うには言うのですけど、消え入るような声で恐る恐る挨拶するのです。これでは言う方も聞く方もちっとも気持ちよくない。挨拶が気持ちのいい選手はいい意味で自信をしっかり持てていると思います。強豪クラブになればなるほど、行動がスマートで挨拶が清々しくパワーというかオーラを感じます。
『はい』という返事ひとつにしても同じです。こちらが伝えたことを『受け取った』『理解した』という意思表示であるはずなのに、無表情で反応が薄く、あるいは小さく頷くだけで、しっかりキャッチしてくれたかどうかがわかりません。
何度も口を酸っぱくしてシーズン中も同じことを繰り返して注意してきましたがましになったかなと思えば、また意識が薄れさほど変化が感じられず、ついにはある大会後の移動の際問題が発生しました。私が別の場所にいかなければならず他のコーチと行動をとってもらうことがあったのですが、その時の選手達のあまりに馴れ合いの態度にそのコーチも困惑し、その様子の報告を受けたのです。お別れするときに挨拶もきちんとせず帰ったというのです。それ以外にも試合中の選手達の行動の取り方で私も大いに感じるところがあったので、ついに雷を落としました。
それを機に、まだ全員とは言えませんが自覚がやっと芽生え、声を張って返事をするようになった者、指示待ちではなく自ら周りを見て必要とあらば小学生の後輩選手の面倒を見てあげる者、他のクラブチームと同じ場所を使う時に様々な配慮ができるようになった者が出て来ました。チームなので、一人気づくことができればそれは次第にチーム全体に伝わります。いい兆しが出て来ました。
そしてシーズン最後の今大会、全日程でとてもいい雰囲気で試合に臨むことができました。学年が下の選手も自覚し始めた先輩に引っ張ってもらいながら、先輩の行動を見習って少しずつ自発的に動けるようになりました。他のクラブチームとも気持ちのいい挨拶を交わすことでコミュニケーションの機会が増え、交流が出来たクラブチームの出番が来るとお互いが応援し合うという光景も今大会嬉しかったことでした。
雷を落としたミーティングで、私が言ったのは『技術では日本代表選手にはまだ全然敵わないけど、マナーや挨拶だったら日本代表選手に貴方達の意識次第ですぐにでも勝てるのよ』ということです。それぞれにどう響いてくれたかはわかりませんが、よい兆しが芽生えたこれをスタートに、いつ接しても気持ちのいい、思わず応援したくなるようなチームにもっともっとなっていけたらいいなと思っています。コーチの私ももっともっと精進です。
さらに、これから期待すること、見えた課題についてはまたこの次、第2弾にてお話できればと思います。
武田美保たけだみほ
アテネ五輪 シンクロナイズドスイミング 銀メダリスト
アテネ五輪で、立花美哉さんとのデュエットで銀メダルを獲得。また、2001年の世界選手権では金メダルを獲得し、世界の頂点に。オリンピック三大会連続出場し、5つのメダルを獲得。夏季五輪において日本女子歴代…
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