サラリーマンのお昼ご飯の味方と言えば、大手饂飩チェーンを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。安くておいしいうどんを、極めて短時間で食べられるのは本当にありがたいですよね。その中でも大手の丸亀製麺は世界各地への店舗展開を行っていますが、ある方がアメリカの丸亀製麺の店舗を見て感じた違和感を記事にしてくれています。題して「アメリカの丸亀製麺から考える日本でDXが進まない本当の理由」。
ちょっと内容をご紹介すると、この記事の筆者がサンフランシスコの丸亀製麺を訪れた際に、「スタッフの数がめちゃくちゃ多い」と感じたのだそうです。この方がざっと数えたところ、その数は12人。その理由は、一人一人に明確な業務が設定されており、他の業務は行っていないことにあると考察しています。例えば、「オーダーをとる」「麺を準備する」「麺を茹でる」「茹でた麺を渡す」「麺を冷やす」といった具合。
しかし、こういった役割分担は、アメリカでは普通のことなのだと言います。確かに、日本の店舗ではそれほどまでには多くありません。一人がいくつもの業務をこなすのが当たり前です。
ここでこの筆者は、「アメリカのように細分化され、シングルタスク化された業務はデジタル技術やロボットなどで自動化しやすい」という考察をしています。丸亀製麺のような飲食店では少し事情が違うかも知れませんが、このような発想でさまざまな企業のさまざまな業務が組み立てられているのなら、自動化しやすい部分は確かに多いのかもしれません。逆に、日本の製造業では「多能工」と呼んで一人がさまざまな業務を行えるように取り組んで来ました。このようなマルチタスクの業務を自動化する際には、業務を一旦分解する必要があります。
同じ仕事を多人数で行えば、人件費も作業時間も単純に多くかかります。日本の方が効率が良くコストも抑えられるはずです。実際、サンフランシスコではかけうどんが$4.50(500円以上)と、日本よりも大分高いです。しかし、見方を変えると、日本の従業員はアメリカの3-4倍の仕事をしながら、3-4倍の給料を貰っているわけではありません。(それどころか、向こうの方が時給は高いそうです)日本人は器用で働き者で、そのために安くて良質なものを生み出せるわけですが、仕事量と能力に見合った給料を貰っているとは言えないということです。自動化しなくとも(給料が安いことで)安くて良質なものを提供できるのであれば、無理して効率化(=DX)する必要も無いわけです。これが、日本でDXが進まない原因になっているのではないか、というのです。確かに、そういった面はありそうです。
しかし、器用で働き者という日本人の美点を捨てて、シングルタスクに移行するのが良いと言うわけではありません。これだけ素晴らしい労働力があるのですから、それをうまく活かしてしかも効率化も果たせば、今の何倍もの売上を上げ、何倍もの給料を支払えるのではないでしょうか。そういった「日本型」のDXを考えて行かねばならないのです。
大越章司おおこししょうじ
株式会社アプライド・マーケティング 代表取締役
外資系/国産、ハードウェア/ソフトウェアと、幅広い業種/技術分野で営業/マーケティングを経験。現在は独立してIT企業のマーケティングをお手伝いしています。 様々な業種/技術を経験しているため、IT技…
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