前回のコラムで、「Web3とは単なるバズワードではなく、インターネットをもう一度ユーザーの手に取り戻すための取り組みなのです。」と書きましたが、これでは漠然としすぎていて、何から手を付けたら良いのかわかりにくいですね。そのため、Web3が実現する未来の中でも、最も早く実現が期待される分野についてもう少し具体的なビジョンが語られています。それが、クリプトエコノミーです。(トークンエコノミーとも呼ばれます)
Web3の基盤となっているのがブロックチェーンであることは前回書きましたが、ブロックチェーンには暗号技術が使われています。ブロックチェーンを使うビットコインなどの仮想通貨や昨年話題になったNFT(非代替性トークン)などのように、暗号(クリプト)技術を使って通貨や所有権などの「価値」をネットでやり取りするのが、クリプトエコノミーです。「情報」を流通させるインターネットを使って「価値」を流通させることができるようになったことが、ブロックチェーンの革新的な部分なのです。
ネットで金融取引なんて、今でもできるじゃないか、とお思いになるかも知れませんが、今のネット上での金融取引は「ドル」や「円」などの国家が定めた法定通貨をネット上でやり取りできるようにしたものです。あくまでも法定通貨の1つの流通形態に過ぎません。
これに対してビットコインなどの仮想通貨は、国家以外の主体が発行して、それそのものが価値を持って流通し、必要に応じてドルや円と「交換」できます。いわば、国家以外の主体が「通貨のようなもの」(トークンといいます)を生み出せるわけで、それが仮想通貨の新しいところだったわけです。今後さまざまな発行主体が独自のトークンを発行すれば、さまざまな経済圏が生まれ、価値のやり取りがこれまで以上に低コストに、スムースに行えるようになることが期待されています。
こういった特徴には経済界も注目しており、11月15日には経団連が「web3推進戦略」を公表しました。Web3はビジネスの分野で先行して取り組みが進められていくのでしょう。
ただ、経団連の発表は暗号資産交換業大手のFTXが破綻した直後に行われたため、「経団連はこんな危ないものを推奨するのか」といった批判も聞かれるようです。FTXの破綻の詳細はまだわかりませんが、経営者が資金を違法に流用したともいわれており、暗号資産そのものの仕組みに問題があったわけではないのではないか、という話もありますので、こういった事件に一喜一憂せず、長い目でWeb3の可能性を探っていくべきでしょう。
大越章司おおこししょうじ
株式会社アプライド・マーケティング 代表取締役
外資系/国産、ハードウェア/ソフトウェアと、幅広い業種/技術分野で営業/マーケティングを経験。現在は独立してIT企業のマーケティングをお手伝いしています。 様々な業種/技術を経験しているため、IT技…
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