以前「DX人材は社内から見つけるべき」と題して、「DXに詳しい」「DXを遂行してくれる」人材を外部に求めるのではなく、業務に精通した社内人材のITスキルを上げることが結局早道である、というコラムを書きましたが、政府の政策もそちらの方向に向かい始めた様です。
昨年10月に開会した臨時国会の所信表明演説で、岸田文雄首相は個人のリスキリングの支援に5年間で1兆円を投じると表明しました。年功序列的な職能給からジョブ型の職務給への移行と、リスキリングの支援姿勢を打ち出したものです。この「リスキリング」こそが、既存人材の「学び直し」により、DXを推進しようという政策の表れということができるでしょう。予算化されたことから、民間でもさまざまなサービスが発表され始めています。
この政策には、実は1年前に伏線がありました。これもこのコラムで取り上げましたが、所信表明演説からちょうど1年前の2021年10月に、情報処理推進機構(IPA)が公開した「DX白書」です。デジタルトランスフォーメーション(DX)の現状について戦略、人材、技術の観点から掘り下げ、日本企業と米国企業の比較を行ったもので、中でも特にページ数が割かれていたのが、日米の人材育成の違いについてでした。IPAは経産省所管の独立行政法人ですので、経産省の政策や方針が現われたものと見ることができるでしょう。
私はこれについて、経産省がこれまでの政策を若干修正したものなのだろうと捉えています。経産省は2018年にDXレポートを発表し、そこで初めて「2025年の崖」に言及しました。多くの日本企業においてITシステムのレガシー化が進んでおり、多くのコストがかかると共に新しい技術の導入を阻害している、それを2025年までに解決できなければ、市場での競争力を失うことになる、というものです。このレポートでは、そのために経営層が率先して改革に取り組まなければならないとされていました。このレポートはDXという言葉を一気にトレンドワードに引き上げ、多くの企業でDXへの取り組みが進みました。
しかしそれから2年が経過した2020年、DXレポートの第2段が発表され、DXへの取り組みが「すでにDXを推進している企業」と「何もしていない企業」に二極化していることが明らかになりました。ここで、経産省はDX推進のためには経営層の尻を叩くだけでは無く、現場のITリテラシーの引き上げが必要との判断に傾いたのでは無いでしょうか。その翌年に発表されたDX白書が人材育成について多くのページを割いていたのは偶然では無いでしょう。
過去のコラムでも書いたように、海外のDX事例ではトップダウンで成功している例が多いのですが、日本企業の強みは現場にこそあります。日本型のDXを進める上で、現場のリスキリングが欠かせない状況になっているということなのでしょう。
大越章司おおこししょうじ
株式会社アプライド・マーケティング 代表取締役
外資系/国産、ハードウェア/ソフトウェアと、幅広い業種/技術分野で営業/マーケティングを経験。現在は独立してIT企業のマーケティングをお手伝いしています。 様々な業種/技術を経験しているため、IT技…
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