2023年2月24日でロシア軍事侵攻一年を迎えます。開戦当初ロシアのプーチン大統領は大規模兵力を展開させウクライナ戦争を短期間で終える思惑でした。しかし現実はウクライナ国民の団結と世界各国からの軍事支援、さらにはロシア経済包囲網がウクライナ軍の攻勢とロシア軍兵力の疲弊を招き長期戦に陥っていきます。
プーチン大統領はウクライナ戦争一年の節目までにロシア軍勝利の礎を国民に提示することを掲げ、核兵器使用の圧力を繰り返し発信。欧米諸国によるウクライナへの大規模軍事支援を牽制する動きを加速させてきました。ウクライナ軍の攻勢が昨年10月あたりから戦闘実績として確認され始めるとロシア軍は兵力確保のためロシア国民部分的動員令を発令し30万人規模の予備兵を確保。それでも戦況を変えられず100万人規模の予備兵を強制再徴集する動きを見せてきています。ウクライナ東部の前線では訓練不足のロシア軍予備兵が大量に投入され多数の犠牲者を伴っていることが判明しており、子供を失った予備兵の家族が反戦のうねりを広げ反プーチンの大規模デモが繰り返されてきました。
現実としてウクライナ戦争がロシア国内の分裂により戦況が激変する可能性も拭いきれません。ウクライナ東部、南部一帯のロシア実効支配地域は2014年のウクライナ内戦時からロシア軍が支配領域を段階的に拡大。プーチン大統領は東南部4州を一方的にロシア領に組み込むも、ウクライナ軍の攻勢で南部ヘルソンからロシア軍が撤退する事態に陥りました。欧米諸国から提供された最新軍事兵器が功を奏しロシア軍支配領域をウクライナ軍が一部奪還。ロシアに奪われたウクライナ領土の約40%をすでに解放したことが発表されました。
今後の戦況としてロシア軍が厳冬期を乗り切り兵力立て直しを完遂することでウクライナ首都キーウに再攻撃を仕掛けてくる動きが確認されています。特にウクライナ北部に隣接するベラルーシの存在が戦術を複雑化させるかもしれません。ロシアの軍事同盟国であるベラルーシは自国内にロシア軍を駐留させ合同軍事演習を繰り返すだけでなく、ロシア保有の核弾頭搭載可能ミサイルのベラルーシ領内配備を認めました。ベラルーシ南部国境からウクライナ首都キーウまで距離は約100km。ロシア軍の東南部戦線とは対局にある北部戦線をベラルーシとロシアが共同戦線として動きはじめることが現状を変えるスイッチになるかもしれません。2023年もウクライナ戦争を注視していきます。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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