2016年4月入社の新卒採用活動が、3月から始まります。インターンシップという名称で既に学生に接触し、選考している会社もありますが、既に就職先を決めているような学生はごくごく少数で、この3月1日からの採用サイトオープンからいよいよスタートとなります。
今年の注目点は、スタートが3か月後ろ倒しになったこと。昨年までは、3年生の12月解禁であったものが、大学での勉強に差し支えがあるという理由から3月解禁となりました。多くの企業が正式な内定を出す時期は10月と変わりませんので、採用活動の期間(学生からみれば、就職活動の期間)が10か月から、7か月に短縮されたことになります。これがどのように影響するかが、今シーズンの一つのポイントです。
後ろ倒しが決定された頃は、
「期間短縮によって、内定がとれない学生が増えるのではないか」
「学生が焦り、解禁前からそわそわして、かえって学業に専念できなくなる可能性がある」
「短い期間で企業を決定しなければならなくなり、検討する時間がなく、ミスマッチが増えるかもしれない」
「採用する企業側では、一気に選考するだけの人員体制が作れない中小企業が不利になるだろう」
といった懸念が多くありましたが、私はそうはならないだろうと予想します。
期間が短縮されても、学生には余裕が感じられます。仮に、リーマンショック後の就職が厳しい頃に実施されていたら焦っただろうと思いますが、昨シーズンの就職状況はとても順調で、先輩が難なく就職を決めている姿を見ていますから、「何とかなるだろう」くらいに考えている学生が多いはずです。そんなノンビリした姿勢なので、学生が応募する会社の数はやや減るくらい、期間短縮も含めるとかなり減るのではないかと思います。採用する会社の数は、先行きの人手不足感から増加していますから、1社当たりの応募者数は平均的には相当に減少すると考えられます。
会社説明会のキャンセルも多くなりそうです。期間が短縮されるので、会社説明会の日時が重なるケースが増え、結果として予約しているのに来ない学生が増えるでしょう。昨シーズンは6割が参加していたのに、今年は半分も来ないということが起こります。企業としては応募者数、説明会参加者の減少の中で、どうやって採用数を確保するかが課題となります。要するに、歩留りをいかに上げるかということです。説明会の参加者の半数くらいしか面接に進まなかったのを、6割、7割に上げていく。次回の面接に進む学生を増やす、内定を受諾する割合を増やす。つまり、同じことをやっていたら失敗に終わるわけで、説明会・面接・フォローの巧拙がこれまで以上に問われるシーズンになるでしょう。
もう一つ、今年は中小企業にとって気づきのある年になるはずです。これまで、多くの中小企業は、有名企業・大企業が採用を終了してから採用活動を行っていました。同時に採用活動をやっても、あとで大企業にとられていくだけだ、という意識が強く働いていたからです。しかし今シーズンは、期間にそれほどの余裕はありませんから、中小企業の採用活動の時期が大企業と同じか、少なくとも重なるはずです。恐らく、中小企業の採用担当者は苦戦を予想しているでしょう。「大企業と一緒にやったら、負けるに決まっているじゃないか」と。
ところが、「やってみたら、意外に採れるじゃないか」となるはずです。もともと、大企業と同時に採用活動をしたら負けるというのは勘違いで、私は、やり方次第で十分に伍していける例をいくつも知っています。今シーズンは応募者・説明会参加者の減少を予想して、上手に工夫を凝らす中小企業が、例年以上に出てくるでしょう。また、期間短縮によって大企業と同時期に採用活動をせざるを得なくなります。その結果、やり方次第で大企業に負けない採用ができることに多くの中小企業が気付くだろうと予想します。
川口雅裕かわぐちまさひろ
NPO法人「老いの工学研究所」理事長(高齢期の暮らしの研究者)
皆様が貴重な時間を使って来られたことに感謝し、関西人らしい“芸人魂”を持ってお話しをしています。その結果、少しでも「楽しさ」や「気づき」をお持ち帰りいただけていることは、講師冥利につきると思います。ま…
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