兵士を取り囲む子供たち。歓声と緊張が入り乱れ、兵士たちは急ぎ足で案内人と共に人ごみから距離をおいていく。ここはアフガニスタン南部カンダハール。イスラム過激派組織タリバーンの本拠地として多国籍軍が治安維持にあたりながら、何度も戦闘が繰り返されてきた場所です。兵士たちの任務は国際復興支援隊として、破壊されたアフガニスタンの生活基盤を整えていくことにあります。しかし、ここでは子供たちの学校さえも壊されていく。カンダハール一帯に暮らす村人にとっての願いはただ一つ、平和に暮らしたい。これさえも手に入れることができない環境が現在も続いているのです。
戦場に立たされる子供たちの笑顔を取り戻す一つの原動力は、学校を修復し、基礎教育基盤を整えることがあげられます。戦場となっているこの一帯に新しいアフガニスタンの希望をみることができるのか。武装した兵士が日常的に周辺をパトロールする。その脇を子供たちが学校に通う。教育のもつ力を恐れているのはイスラム過激派組織の指導者たち。ゆえに子供たちの自由な教育をいっさい認めず、学校を破壊し、子供たちを事件に巻き込むことで、自分たちの過激な思想を暴力で押し付けてきました。
アフガニスタンでは貧困、都市部との格差に苦しむ生活環境、戦闘による荒廃した暮らし。不安や怒りが渦巻き、お互いの疑心暗鬼がうごめいています。家族の暮らしの為であるならば、過激派組織タリバーンの破壊的な行動を支援する人物も連鎖してあらわれてきています。貧困の渦と基礎教育の断裂が、アフガニスタン南部を陸の孤島状態におとしこんでいる現実があります。
現場に立つ兵士たちは、祖国に残してきた自分の子供や兄弟の姿がアフガニスタンの子供たちと重なると言っていました。サングラスをはずした兵士たちの表情からは、恐怖よりも気さくで穏やかな若者の表情を汲み取ることが何度もありました。前線では誰しもが恐怖と絶望を混ぜ合わせた不思議な感覚におかされていく。
戦場、、、、、、、。そこではたくさんの方々の命が当たり前のように奪われていきます。そして戦争の犠牲者は子供たち。悲しみの最前線にあっても、一瞬だけでも子供たちの笑顔に遭遇することができたこと、これが私にとって忘れられない戦場の記憶として刻まれています。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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